森林空間を楽しむレクレーションのための『MRS-1 ベーシックツリークライマー』講習を開催しました。

　今回の参加者は森林文化アカデミーの学生、岐阜県内の造園業の方、愛知県や福井県からの合計８名、メイン講師はツリークライミング®ジャパンの公認インストラクター近藤紳二さん、そして加藤治久さん、下西あづささん、全体アシスタントはJIRIです。

MRS-1の説明をする近藤さん

　MRSツリークライミングのMRSとは、Moving Rope Systemの略です。

　ループ（輪っか）状のロープを縮めることでクライミングする登り方で、この方法は樹上作業のプロの技をレクレーションに転用したものです。

　インストラクターの近藤さんは、「きのぼり屋」の屋号で樹上作業をされるアーボリストです。またツリークライミング®ジャパン（以下、ＴＣＪ）は、国際基準に準じたロープやハーネスなどのギアを用いてツリークライミング指導する団体で、中部大学教授であるJohn Gathright博士が主宰を務めるています。

　最初にMRS-1ではどのようにクライミングするのかを見学してもらいました。

今回習得するMRS-1技術を見学する参加者

　２日間利用するギア類の説明を完了したら、まずどのようにロープセッティングするのかを学び、その第１歩となる「スローライン テクニック」を練習です。

　スローラインとは特殊な細い紐で、この紐の先に「スローバッグ」という重りをつけて、木の股に投げるのです。最初から木に投げるのではなく、まずは広い場所でスローラインを投げる練習です。

スローライン練習する参加者

　今回クライミングさせてもらう木はコナラです。幹肌はゴツゴツして、樹皮はコルク質があり、小さなドングリを付けます。

　「木と友達になろう」をモットーにクライミングするため、まずはコナラの幹に手を当てて「宜しくお願いします！」と挨拶してから、スローラインを投げる練習をしました。

　また踏圧害防止などの点から「落ち葉掛け」をしてからクライミングのセッティングしますが、その途中で近藤インストラクターが、ロープセッティングのコツを伝授してくれました。

どのようにロープセッティングすべきか指導する近藤さん

　ツリークライミングではスローラインテクニックが重要で、このラインセッティングでクライミングしやすさが決まります。参加者がセッティングしたスローラインについて近藤さんが再度アドバイスしてくれました。

スローラインについて説明する近藤さん

　ロープセッティングするには、まずロープにハウススリーブを通し、ロープ先端にスローラインをクローブヒッチ、ハーフヒッチ、クローブヒッチと結びます。
　その時に何をすべきかもしっかり覚えます。

　ロープに２人以上でぶら下がる「プル・チェック」も実施しました。

クライミング前の最終チェックを指導する近藤さん

　ロープが設定できたらロープワークです。　「あれ、それでよかったかな？」と近藤さんに聞かれながらも、しっかりノットやヒッチ確認をしなければ、クライミングすることはできません。

　最初に「オン・ロープ」と、ロープの占有宣言をします。

　BARKチェック、バウンズチェックしてから、「クライミングアップ」コールして、クライミングです。フットループに足を掛けてクライミングアップして、スリップ・ノット（セイフティ・ノット）を作りながらアップしていきました。

うまくクライミングする参加者

　16時を過ぎた時点で、記念撮影タイムです。

　樹上に６人の参加者、地上に参加者２人とスタッフ４人で「ツリー」と言って記念撮影しました。

１日目の記念撮影

　そろそろ暗くなるため、ギア確認しながらクリーンナップです。そしてこれから、夜の講義です。近藤さんが映してくれたTCJⓇファウンダーのジョン ギャスライトさんからのメッセージを聞き、それに続いてテキストにそってツリークライミングの歴史やコール・クライミングシステムなどの再確認です。
　「木と友達になろう」「地球は大きな貯金箱」を基本に、①Low ＆ Slow、②Not 3 D、③Never Off Rope などもです。

次に、テキストを参考に、日中に実施した内容の再確認とその意味について学びます。
　１日、英語のコールでお疲れですが、19:00過ぎまで一生懸命に学びました。

テキストによる講義をする近藤さん

　さてさて２日目です。今日も晴です。最初はロープワークのノットチェックからです。

　クローブヒッチ、ダブルフィッシャーマン、フィギュアーエイト、ブレイクス、プルージック、スリップノットを確認しました。

　それがパスしたら、みんなで「もくもくストレッチ」を体感して頭も心も解しました。

２日目最初のノットチェック

　次は安全なアンカーポイントの見極め方のお勉強です。

　写真判定による見極めと、実際の木材標本による見極めをしました。現物でバークリッジや入皮について確認してもらいました。

アンカーポイントの確認

　次はツリーボートとスプリットテイルシステムの説明です。

　ツリーボートへの入り方、入っている時にオフロープ状態にならないために何に気を付けるべきなのか。そしてツリーボートから脱出する際の注意点は何か。

　スプリットテールについては使い方、利点を学びました。

ツリーボートやスプリットテイルの説明を聞く参加者

　次はランヤードの使い方について、イベントの時にはウルトラ・ライト・ランヤードを使うことや、プルージックコード、プーリーの組み込み方を学び、自分で使用できるように組み込みました。

ランヤードの使い方を学ぶ参加者

　そしてエイト環（８環）によるビレイを体験。

　どのように声掛けして対応するのか、ロープ操作はどうするのかなど、見ているのとやってみるのでは相当違いがあることを体験してもらいました。

ビレイの練習をする参加者

　最後に、２日間の学習の成果を筆記確認です。TCIの創設者であるピーター・ジェンキンスさんや、TCJファウンダーのジョン・ギャスライト博士、ロー＆スロー、ノット・３Dなど、様々な項目を再確認しました。

最終確認テストを受ける参加者

　本日の〆は記念撮影です。

　２日間フィールドとして利用した自力建設「こならの小径」で、ツリーと掛け声を掛けながら、ポーズをとりました。　下側の４人はもくもくストレッチの「スギの木のポーズ」で撮影しました。

ポーズをとって集合写真

　今回ご参加いただきました皆さん、２日間ご苦労様でした。なるべく早い段階でロープワークを復習されて、安全安心な樹上の世界を楽しんでください。また、今年９月のプロ用のBAT（ベーシック・アーボリスト）講座もご参加ください。

　以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。