アーボリストへの道『Basic Arborist Training-2(BAT-2)』

開催した日:

 morinos連携講座『Basic Arborist Training-2(BAT-2)』、安全な樹上作業のためのアーボリスト・トレーニングを2日間にわたって開催しました。

 アーボリストへの道として、Light Pruning and Rigging (軽い剪定とリギング作業)の基本を学ぶBAT-2Rigging(リギング)がどれほど危険な仕事であるのか聞きながら、「安全に作業する」ための技術と考え方を学びます。

 講師はBAT-1に引き続いて、ATI(Arborist® Training Institute)トレーナーの宇治田さんと近藤さん、アシスタントとして下西さん、杉田さん、そしてJIRIです。

宇治田さんによるギアの説明

宇治田さんによるギアの説明

 

 参加者が持参したギア類を確認する途中、チェストハーネスを発見。その歯を見ると、写真下左側のシャーク・トゥース(Shark tooth)でしたが、ロープのP消耗を考えると写真下右側のコーン・トゥース(Corn tooth)の方が良いよねと解説されました。

参加者が持参したギアのチェストハーネスについて考察

参加者が持参したギアのチェストハーネスについて考察

 

 リギングではアンカー部分にガースヒッチやカウヒッチ、ティンバーヒッチなどでリギングブロックを取り付けます。それで通すリギングロープには相当な荷重がかかるため、ベンド・レイシオ(Bend Ratio:ロープの曲げ比)を考えることが重要です。

 これはリダイレクトの際も同様で、リギングでのベンド・レイシオはロープ直径の4倍必要です。

Bend Ratioについて説明する宇治田さん

Bend Ratioについて説明する宇治田さん

 

 下の写真のリギングロープは直径19mmです。リギングブロックに通してみると通りますが、ブロックに示されている適用ロープ直径は16mmですので、利用してはいけません。

 ブロックの取り付けはティンバーヒッチなら5回以上回して均等に巻くこと、幹の直径半分以上まで巻くこと、そして使用する向きがあること。

 ウーピーやルーピーを利用する場合、枝下ろしに利用するロワリング・デバイスにウーピーは扱いやすいが、ルーピーは適さないことも説明されました。

ロープがリギングブロックに通れば良いのではない事例

 ロープがリギングブロックに通れば良いのではない事例

 

 下ろす枝に見立てたペットボトルを使って、アンカーに掛かる荷重、リギング時の動荷重や衝撃荷重をハカリを利用して確認しました。吊り下げる荷(枝や幹)を早く下ろせばリギングブロックをを取り付けたアンカーに負担が少ないことも確認しました。

 続いて、参加者が3人ずつ各々①樹木の役、②フリクション・コントロール・デバイス役、③リギング操作役に分かれて、確認体験しました。

秤を利用してリギング時の荷重を説明する宇治田さん

秤を利用してリギング時の荷重を説明する宇治田さん

 

本日の主な内容は、 ①想定通りの枝おろし Limb Removal、 ②適確な受け口の向きとカッテイング手順について、 ③高度なハンドソーテクニックの必要性、 ④リギングRigging に関する「力学」の基本的理解、 ⑤リギングロープ各種 ロープ特性と役割の理解、 ⑥各種スリング類の特性の理解と選択、 ⑦各種コネクティング リンクス等の使い分け、 ⑧各種フリクション コントロール デバイスとブロック 特性の理解と選択、 ⑨ポータラップやリガー、RC2001フローティングやボラードの特徴、 ⑩ライトリギングの基本セッティング 実践訓練、 ⑪リギング作業に必要な各種ノットの実践訓練

 フリクション・コントロール・デバイス(ロワリング・デバイス)の取り付けに使うカウヒッチ&ベターハーフ、ティンバーヒッチなどもチェックされます。カウヒッチはスリングが長くないと使えないが、どの方向でもロープを曳くことができる。ティンバーヒッチはスリングが短くても使えるが、ロープを曳く方向が決まってしまいます。

ロワリングデバイスやフィドルブロックの説明をする宇治田さん

ロワリングデバイスやフィドルブロックの説明をする宇治田さん

 

 枝を持ち上げたり、引っ張ったりと、ライトリギングで利用する「カラビナ+プーリー+プルージックコード」の単純な方法と利点欠点、「テンションプーリー」の使い方、そして「フィドルブロックによる5倍力システム」について解説を受けました。

 リギングに必要なロワリングデバイスについて、フローティングとボラードについて説明を受けました。リギングブロックなどには最小破断強度(最低破断荷重:ミニマムブレイキングストレングス:MBS)は記入してあります。ちなみに平均破断荷重はABSと示されています。

 また運用強度WLL Working Load Limit)も記載されていますが、これは安全マージンを含んだ絶対大丈夫な数値です。

 今回使用したリグングブロックはMBS100KNで、WLL20KNとなっており安全係数がMBS1/5となっています。枝を吊り下げるなら動荷重になるので、更に安全率を10とすると200kgの重さの枝しか吊れないことになります。

 24KNのカラビナですが、安全率を10とすると、使用荷重は2.4KNとなります。

  (使用荷重)×(安全率)=(破断荷重) 100kgf(1kN)× 5= 500kgf(5kN)

  (破断荷重)÷(安全率)=(使用荷重) 500kgf(5KN)÷ 5=100kgf(1kN)

 一方、人間を吊るすときには、物を吊るすときより安全マージンをとらなくてはいけないとの思想から、安全率=10とするのが一般的であり、各種の法、規格でそのように定められています。

 続いて、参加者が3つのグループに分かれて、クライミングとリギング用のセッティングを体験しました。

3つのグループに分かれてリギングセットの練習

3つのグループに分かれてリギングセットの練習

 

 枝下ろしの チップタイTip Tying)とバットタイButt Tying)についてストラップ利用やバランサー利用、ロワリングデバイスのうちボラードタイプの説明を受けました。

 丸太を枝に見たててバランシィングして、下ろす練習を何度も繰り返しました。

丸太を下ろす練習

丸太を下ろす練習

 

 最後にBAT-2受講者で記念撮影しました。みなさんご苦労様でした『Tree!』。

参加者と記念撮影

参加者と記念撮影

 

以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。

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 TARS-1 :Tree Aerial Rescue and Safety level-1

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