川漁師 平工顕太郎さんから学ぶ『長良川の生き物と森とのつながり』
開催した日:
結の舟代表であり、職業漁師であり、エコツアーガイドである平工顕太郎(ひらく けんたろう)さんをお迎えしての県民講座。
平工さんは長良川を拠点に活動する現役の職業漁師で、かつては国指定重要無形民俗文化財「長良川鵜飼」で鵜舟の船頭も務めた経験から、一年を通して長良川での漁を行う傍ら、鮎をはじめとする川魚の出荷や加工品の企画も手がけておられます。

参加者に意見を聞く平工さん
平工さんは伝統的な木造和船による長良川エコツアーのガイドや、子どもたちへの自然学校活動にも携わるなど、次世代への「川の恵み」の継承にも力を注いでおられるため、参加されたお子さんたちにも分かりやすい言葉で話しかけてくださいました。
世界農業遺産に認定された『清流長良川の鮎』。その鮎(以下、アユと表現)はきれいな水にすむと言われますが、養殖場ではコンクリートやポリエチレンの水槽でも育っていることを写真とともに解説されました。
アユは川では石に付着したケイ藻やラン藻を食べるため、水中の石には藻類を削り落とした痕(はみ痕)が見られます。アユが食べる藻類が育つためには、常に一定以上の水量と太陽光が必要です。

水の循環について話す平工さん
平工さんが、「タオルを濡らして放置すると、どうなるのか?」を参加者に順に問いかけると、「水が蒸発して無くなる」と答えが返ってきました。
では、長良川の水はどうして無くならないのか? まず①雨が降ったら、どこに落ちた?と参加者に質問しながらみんなで循環を考えていきます。 例えば②森の中に染み込み、③根っこを通じて土壌に蓄えられ、④そこから染み出た渓流となり、⑤合流して大きな川となり、⑥海に到達すると、⑦太陽に熱せられた海水が蒸発し、⑧雲になる、などの声が上がりました。こうした循環サイクルのお陰で川が流れるのです。
次に、①森に動物がいて水を飲んだあと、どうなる?と質問が。②水は体にとどまり、③おしっことなって排出され、④上記と同じようなサイクルで水が循環することをそうぞうしていきました。
今回の台風で大雨が降り、清流長良川も濁流になってしまいました。平工さんは昨夜一睡もせず徹夜で川舟を管理しておられました。その濁流の映像を見ながら、「この濁った水はどうのようにきれいになるのか?」「死んで腐った魚がいたらどうやってきれいになるのか?」
アユは石についた藻類を剝がし食べて磨くけれど、水をきれいにすることはないとのこと。オイカワはアユと違って浮袋があり、水中で浮遊する水生昆虫などを食べています。ではカマツカはどうか。長良川ではスナクジと呼ばれるように、川底の砂を口に入れて吐き出し、川底をきれいにしています。長良川には100種類くらいの魚種がおり、それらが食べるものや棲み処を分けているのです。

オイカワの浮袋について説明をする平工さん
長良川流域にはマツカサガイやドブガイがいるが、この貝がいないと、タナゴの仲間やカワヒガイなどは、繁殖できません。生き物は多くのつながりの中で維持されるもので、森の落ち葉は水生昆虫によって食べられるように、「命のつながり」を維持することが重要であると話されました。

タナゴと二枚貝について説明する平工さん
濁った水がきれいになるには「植物」が重要ですが、特に水田は貯水の意味でも大きな役割を果たしています。
平工さんは水田管理もしていますが、その水田の半分ではガマ(蒲)を育てています。

平工さんのお宅のガマ畑
それはガマの中に巣をつくるカヤネズミを絶やさないためです。ちなみにガマの穂は「蒲焼」の語源とされている植物です。
カヤネズミが生息するということは、美しい水辺があることを示しています。

平工さんの掌に乗ったカヤネズミ
平工さんはニホンミツバチも育てています。このお陰で多くの植物が結実し、世代をつなぐことができる。ミツバチにとっては巣から2km圏内の植物が元気であることが重要で、もしも農薬を利用した水田管理をしてしまうと、ミツバチたちは死んでしまって「命のつながり」が途絶えてしまいます。

ニホンミツバチについて説明する平工さん
川でアジメドジョウがいれば、その近くには伏流水による湧水があるばず。アジメドジョウはそこで冬を越し産卵しますが、水が伏流することできれいになります。

代表的な6種類の生き物について説明する平工さん
きれいな川を守るためには、①トビケラのような水生昆虫、②モクズガニのような甲殻類、③シジミのような二枚貝、④ガマなどのような水質浄化にも役立つ植物、⑤コサギなどの野鳥、⑥ミツバチなどの昆虫類、などなどいろんな生き物が重要な役目を果たしています。

すくい取った魚を水槽に入れる参加者
次は平工さんが持参されたヌマエビやカワムツ、ヤゴ、カワニナを参加されたお子さんたちにすくい上げてもらい、水槽に入れてもらいました。
しかしここで要注意です。
持参された発泡スチロール容器の中には、アメリカザリガニも多数潜んでいました。そのアメリカザリガニを水槽に入れてしまうと、既に水槽にいるオイカワやカワムツなども食べられてしまいます。
アメリカザリガニが入らないように、参加者で見極める仕事があったのです。

鵜飼の船頭をしていた時の平工さん
続いて、平工さんの普段の仕事について。
平工さんは大学で水産学を学び、鵜飼の船頭経験を経て、現在はアユ漁を主体に川漁師として活躍しています。

ぼうちょう網漁の様子
アユが小さいうちは海から川を遡上するため、「ぼうちょう網漁」で稚アユを採取します。この漁法でも伝統的な技術が駆使されます。

平工さんが手投網で捕ったアユ
秋には手投網(ていな)で集団となったアユを捕まえたりしますが、その鮎をのせるヒノキ製の木箱(諸蓋:もろぶた)は刑務作業で作成されたものを使っているエピソードまで紹介してくれました。

ウエについて説明する平工さん
他にも冬場に長さ1mほどの大きなマゴイを捕るための大きな「ヤス」や、竹製の「ウエ(またはウケ)」という漁具なども紹介してくださいました。
最後はみなさんからの質問コーナーです。
どうしてアメリカザリガニは他の生き物より強いのか? 水槽の水を長くきれいな状態で保つためのコツは何か? 水槽に入れる材料のうち、水質管理上最も重要なのは何か? 水草の役割は何か? などなど、多くの質問に回答されていました。

カニの漁具について説明する平工さん
今回、平工さんには午前1回、午後1回の合計2回、講座を実施していだだきましたが、参加されたご家族のみなさまにも大満足いただけました。
ご参加いただいたみなさま、講師の平工顕太郎さん、今回はありがとう御ございました。
以上、報告はJIRIこと川尻秀樹でした。
休館日:火・水曜、年末年始(休館日が祝日の場合、翌平日が休館日になります)
Phone : +81-(0)575-35-3883 / Fax:+81-(0)575-35-2529



