森林インストラクター林業現場研修

開催した日:

 森林インストラクター資格取得者を対象とした『林業現場研修』。

 今回は郡上森林マネジメント協議会事務局長で、森林評価士や地域森林監理士などの資格を持つ、樋口享二さんにメイン講師をお願いして、郡上市の伐採現場で「山の見立て」や「原木市売り」について研修しました。

森林インストラクターの林業現場研修風景

森林インストラクターの林業現場研修風景

 最初に向かったのは郡上市八幡町美山の林産(木材生産)現場です。

 ここで『木を診て山を診る』と題して、素材生産に必要な知識・技術として

 ①木の診方【樹種、林齢、樹高、胸高直径、用途】

 ②山の診方【起伏、路網、傾斜、土質、地耐力、伐区の形状・大きさ、障害物、蓄積、施業方法、搬出面積、搬出材積、価値(販売価格)、搬出コスト】などについても学びました。

 まず基本は立木の価値です。単に直径が大きい、太いだけの木材では価値がありません。 品質の良い「役物」なのか、普通の品質である「並材」なのかから始まり、どんな木材が、どれくらいあって、どのように搬出して、どこにいくらで販売するのか。

 そのために見るべき項目は、①通直か曲がりか、②胸高直径は、③樹高は、④枝下高は何mか、⑤残枝があるか否か、⑥瑕疵はあるか否か。 より高く販売するための戦略をどのように練るのかが問題となります。

 1つ1つ事例を示して木材の価値について説明する樋口さん

 

 今日は伐倒はチェンソーで、集材はスイングヤーダで実施されていました。

 直径が大きい、太過ぎるスギ並材、具体的には末口が52cm以上ではパルプ材に送られてしまうことが多い。またスギノアカネトラカミキリのような材質劣化害虫が発生していたり、台風などによるモメの入ったシオレ材、凍裂による水ワレ材があれば、材価は急激に低下する。

 現在の作業班では1人当たりの素材生産量は8㎥を越えているそうです。

 重機はグラップルにワイヤードラムを備えたスイングヤーダ

 下の写真中央のスギをチェンソーマンが伐採して見せてくれました。

 迫力ある伐採風景で、地面に響くような音を聞きました。この現場は間伐3回目とのことで、林内に残存するトチノキやホオノキはしっかり残して、将来に備えるような施業をされていました。

 

 現場の次は、郡上木材センターで「市売り」について学びました。

 丁度、山土場から運送されてきた原木をHIABで椪積みされていました。この椪積みは並材のようです。

HIABでトラックから木材を下ろしていたオペレーター

 この木材センターはスギとヒノキが主体ですが、一部にカラマツやミズナラ、ホオノキ、ミズメ、ヤマザクラがありました。こうした広葉樹もしっかり販売して、山主さんにお金を戻す努力をされています。

 ちなみにホオノキは日本刀の鞘にも利用されますが、最近はめっきりホオノキ材が入手できないとのことでした。

 カラマツやミズナラなど、少量取引する木材について説明する樋口さん

 

 多くのスギ材、ヒノキ材が椪積みされています。これらは1椪(1山)いくらで取引される木材です。

 利用される用途に応じた径級に仕分けされ、それぞれが製材業者さんに流れていきます。

 用途ごとに仕分けされたスギ丸太

 次に見たのは1本ずつ販売される原木です。ここにはスギ、ヒノキ、モミの大径木が1本ずつ斜めに配置してありました。大径木の全体をしっかり評価してもらうために、斜めに配置してあります。この大径木の中には年輪が均一で高価買取が期待されるものもありました。

 モミの大径木は卒塔婆材や棺桶材、そうめん箱材として取引されます。

 1本ずつ販売される原木について説明する樋口さん

 市場に並ぶ原木の樹皮についても説明がありました。

 樹皮に残る枝打ち痕、落枝痕で木材内部をどのように推測するのか、樹皮が履歴書となって材価が決まることも解説されました。

 とにかく収穫した木材を少しでも高く買ってもらうために、特定の業者に販売するのか、システム販売するのか、市売りするのか、曲材を利用する業者はどこか、など様々な努力をされているそうです。   

 木材の販売先について解説する樋口さん

 

 次は、郡上市美並町高砂にある古川林業の人工造林木を見に行きました。

 古川家は1810年から林業を生業とされ約200年の歴史があり、文政10年(1827年)には8代当主、古川七兵衛義明が郡上藩に植林を願い出ておられる記録が残っています。
 様々な内容は『木の旅長良川』という書籍に、先代当主の茂樹さんが6年間にわたって昔の林業を再現された内容と共にまとめられています。
 初期の名残の造林木が古川家の裏山に2本残っており、その1本が下記の写真の個体です。

古川林業に残る約200年生人工造林木

古川林業に残る約200年生人工造林木

 そして次は郡上市美並町高砂にある『美並ふるさと館』です。

 このふるさと館の展示物や星宮神社社叢林が、森林学会で「林業遺産」に認定されています。ここの展示物は古川茂樹さんが残された品々で埋め尽くされ、山の生活と林業の道具で満たされていました。(写真撮影は遠慮してあります)

 美並ふるさと館の玄関に設置されている「林業遺産」の立看板

 最後に、京都の篠部さんに今回の研修のとりまとめをお願いして1日の研修を終えたのです。ご参加いただきましたみなさま、ありがとう御座いました。

 今回の研修について語る篠部さん

 森林インストラクターとしての林業研修、今回は林業のごく一部を学んだだけですが、それでも初めて聞く事柄も多く大変勉強になりました。今後も一層、一般の方々に林業を解説できるよう精進していきたいものです。

 以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。

 

 

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