TARS-1 :Tree Aerial Rescue and Safety level-1

開催した日:

 morinos連携講座アーボリストのためのTARS-1Tree Aerial Rescue and Safety Level-1)を開催しました。

 挨拶の前に参加者のクライミングチェックをしました。

 午前中は室内講義中心に、「安全のために何をすべきか」を1から学びます。

クライミングチェック後の説明風景

クライミングチェック後の説明風景

 

 樹上で重要なのは作業者のポジショニングです。チェンソーでもハンドソーでも重要なのはポジショニングです。

 アメリカのサウスダコタ大学のジョンポール博士のデータでは、重大事故の発生割合は建設業で1/10,000、警察で1/8,200ですが、ツリーワーク(Tree work)は1/3,000と非常に危険です。

 多くの事故事例は「Struck by」と言われるもので、想定外にLoad(負荷)がかかることで発生する事故です。また事故は発生が連鎖する「Accident Chain」などについても学びます。

 

宇治田さんの講義

宇治田さんの講義

 事故に関してみれば、「発生率」は熟練した年配者よりも未熟な若者が多くなる。しかし「重大事故率」は若者より年配者が多くなる。これは熟練者が年を取ったから体が動かないというものではなく、熟練者であるからこそ難しい問題に対処するとか。熟練者故のおごりもあるかもしれません。

 アーボリストのチェンソー事故は1999年時点で下半身中心であったものが、2022年には上半身に多く発生しています。これはチェンソーパンツの普及やバッテリーチェンソーの普及が影響しています。

ケガ率の比較

ケガ率の比較

 

 危険なものにはハードハザードとソフトハザードがあり、ハードハザードは枯れ枝とか建物などの確認で、これはクライマーが事前に実施するTree site inspection(ツリーサイトインスペクション)と同じで、回避することが可能であったり、対策が可能であったりします。

 ソフトハザードは自身の精神状態や天候などで、回避しにくい項目になります。

講義を真剣に聞く参加者

講義を真剣に聞く参加者

 

 「Best Practice」という考え方があります。

 危険行為になるかもしれないRed Line、そのLineの下はBad Levelです。

 しかしRed Lineの上には、③Good levelがあり、その上には②Better levelがあり、更にその上には①Best Practiceがあります。その違いを実践から学びます。

質問をする参加者

質問をする参加者

 

 現場で「victim(被害者=ケガ人)」を想定してレスキュー訓練です。

 ただし実際の現場では事前に、消防署などに現場の状況や現場作業について相談しておくことが重要であり、作業現場に持参する携帯電話はGPSを有効に設定しておくことも需要です。

 レスキュー方法はいくつかあります。

 ①Assisted self rescue、②両手friction hitch control、③Micro pulley hitch rescue、④Hug rescue、⑤MRS single system rescue & Two people single on rope、⑥Lift and pick up / off rescue、⑦Pick up and new rope rescueなどがあります。 

 例えば、腕を負傷したvictimはフリクションを操作できるが、安全のためBelay(確保)して欲しい場合のレスキューに始まり、新たにロープセッティングしてvictimのフリクションと自分のフリクションの両方を操作するもの、その発展形でプーリーでフリクションを下ろすもの、そしてrescuer(救助者)もしくはvictim(負傷者)のどちらかのロープに2人が乗り移ってレスキューするものです。

3人一組になってレスキューの練習をする参加者

3人一組になってレスキューの練習をする参加者

 

救助する人が要救助者とビレイやーにうまく声掛けするのもポイント

救助する人が要救助者とビレイヤーにうまく声掛けするのもポイント

 

 宇治田さんはプーリーを利用したレスキューでは危険を伴う事例として、ある種のメカニカルデバイスを例示して下さり、参加者全員がその危険性を目の当たりにしたのです。

 他にもハグレスキューの変形バージョンもいくつか示してくれました。 下の写真はセキュアードハグレスキュー(Secured hug rescue)で、ランヤードでの固定方法なども解説されました。

セキュアード・ハグレスキューの見本を示す宇治田さん

セキュアード・ハグレスキューの見本を示す宇治田さん

 

 参加者は宇治田さんの指導の下、要救助者の上半身確保を目的にスリングテープをタスキ掛けして救助する方法にもチャレンジしていました。とにかく慣れないことばかりですので、何度も繰り返し練習が必要です。

上半身にスリングテープでタスキ掛けしてサポート

上半身にスリングテープでタスキ掛けしてサポート

 

 要救助者が力が入らずランヤードに荷重が掛かっているとロープでの救助が困難になります。

 そこでランヤードに掛かる荷重をプルージックコードやプーリーを駆使して倍力システムを完成させます。要救助者ロープのブレイクスヒッチより上にプルージックコード、カラビナ、プーリーを、そして要救助者のリンクスにカラビナとプーリーをセットして倍力を完成させます。

レスキューにおける倍力システムの利用

レスキューにおける倍力システムの利用

 

 今回のTARS-1は北海道、秋田、岩手、岐阜、愛知、三重、滋賀など全国各地から参加して下さいましたので、レスキュー練習したケヤキの前で記念撮影しました。

TARS-1の記念撮影

TARS-1の記念撮影

 さて、今回のTARS-1講習会、こうした安全講習は事故が起こらないために実施するものです。

 万が一に備えて今後も安全作業に精進しましょう。ご参加ありがとう御座いました。

 以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。

 

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