里山林整備講座で伐採実施 in 百年公園
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morinos連携講座『里山林整備講座』を実施しました。昨年開催した岐阜県百年公園での講座受講者からの要望もあり、今回はチェンソー整備と特殊な伐採を実施しました。
メイン講師は江崎林業の江崎尚史さん。江崎さんは森林文化アカデミーの非常勤講師など、様々な林業現場で頼られる指導者です。今回はチェンソーの整備及び整備したチェンソーによる造材を、江崎さんに指導してもらい、それをJIRIがサポートする形で研修を実施しました。
初めに近年の事故事例などを挙げて、安全教育上の注意事項や推薦図書などを紹介されました。
また定期的にメンテナンスすべきチェンソーのパーツや混合ガソリンに利用するオイルについて、チェーンオイルについてなど基本的なことを再確認しながら解説されました。
私が持参したCS43RSの【3軸合成値】は「3.3」ですが、古いチェンソーは3軸合成値が大きいものが多く、最近のものは数値が小さくなっています。ちなみにこの数値が4以上あるチェンソーは使用時間を2時間以内にしてください。
チェンソー整備のポイントを説明する江崎さん
各自がチェンソーをメンテナンスする前に、morinosの整備不良チェンソーで整備手順を見てもらいました。
多くのメーカーはチェーンオイルを入れたままチェンソーを置いておくと、オイルが染み出てきますが、この共立チェンソーはエンジンが始動した後にオイルが出るシステムであるため、静置時にオイル漏れする心配がありません。
さてこのmorinosのチェンソーは、ガイドバーの下側手元近くが焼けています。使用したスタッフが整備不良のまま、力任せにガイドバーを押し付けて鋸断しているため焼けており、ガイドバーにバリが出ています。
morinosの整備不良チェンソーを見本にメンテナンスについて学ぶ
エアーフィルターを外す際にはチョークを引いておくこと。プラグを外したらリコイルスタータを少し引いてシリンダーヘッドで蓋をすることなども思い出してもらいました。
morinosのチェンソーはスタッフが一度も掃除していなかったため、オガ屑まみれでしたので、私が念入りに掃除をしました。こうした状態で放置されると困りますので、チェンソー整備の知識が必要になりますよね。
こうしたフィルターをエアーコンプレッサーで外側jから吹き付けると、オガ屑がより奥に入り込むので、必ず内部から外側にエアーを吹き付けてください。
エアーフィルターはオガ屑が詰まった状態
morinosのガイドバーは焼けもバリもあって最悪の状態でしたが、参加者が持参したすべてのガイドバーが同じように焼けてバリが出ていました。
江崎さんがガイドバーの補修をしてくださいました。グラインダーから火の粉が飛ぶほどバリがあったのです。
ガイドバーのバリ取りする江崎さん
基本的なェンソー整備の手順は
①トップカバーの掃除、②エアークリーナーのチェック(この時にチョークレバーを引くこと)、③プラグチェック(リコイルスタータを少し引いてピストンをあげる)、④スタータケース内の掃除(スタータロープの摩耗チェック)、⑤ガイドバーのバリ取り(ガイドバーの曲がり、溝の掃除、グリースアップ)、⑥スプロケットチェック、⑦オイル流量のチェック。
混合ガソリンに調合する2サイクルエンジンは、25:1ならFBオイル、40:1ならFCオイル、最近主流の50:1ならFDオイル。
ちなみに刈払機のエンジンはチェンソーより回転数が少ないため不完全燃焼しやすくなるので、良いオイルを混合させることを推奨します。
参加者自身が持参したチェンソーを整備する
チェーンオイルはチェーンとガイドバーの摩耗を軽減させるのに役立ちます。チェーンオイルには鉱物質、水溶性、生分解性、植物性などの区分けがある以外に、季節によって夏用・オールシーズン用・冬用があります。
最近は環境を配慮する観点から、最もエコな植物性が多用されます。植物性は高価である反面、劣化しやすいことも念頭に利用して下さい。従来利用されてきた鉱物質オイルは安価で劣化しづらいものの、環境に与える影響は大きく、芝生の上に漏らすと芝生が枯れてしまします。
また冬の特にー5℃以下では粘性の低い#10を、これはより広葉樹伐採向きと言えます。オールシーズンは#30で、夏は粘性の高い#50を、これは針葉樹伐採向きと言えます。
自分のチェンソーもあれば会社のチェンソーもある状態
下の写真はソーチェーンです。丸棒ヤスリが当ててある刃は上刃が湾曲しています。これは丸棒ヤスリをかけている上の動きが湾曲していることによって作られます。
ソーチェンの目立ては、針葉樹なら30度、広葉樹なら25度にします。伐倒時の水平切りは横挽き、では斜め切りは何挽きなのか。などと質問しながら、刃角についても説明を受けました。
ダメなソーチェーン刃は上面にいろいろな痕跡が出ます。またデプスゲージは針葉樹なら0.63mm、広葉樹なら0.5mmにしましょう。
ソーチェンの上刃が丸くなっているものを修正中
昼食後、本日の伐採現場に向かい、まずは使用するチルホールの操作確認、スリングの使い方、キトークリップと足しワイヤーの利用についても確認です。
これは作業の成否が「段取り八分」で決まるからです。
現場でチルホールやスリングの使い方を説明する江崎さん
本日の伐採対象木はネムノキです。このネムノキのすぐ近くに電気のキュービクルがあり、の2mほど横には自動販売機が並んでいます。公園を訪れた方々の多くが自動販売機を利用しますし、このネムノキの下の道路は岐阜県博物館の職員さんが自動車で通りだけでなく、公園に来られた方々が歩かれるメインストリートです。
しかしこのネムノキは根元に腐朽部分があり、山側の幹には2m以上にわたって樹皮が盛り上がった縦溝が確認できます。明らかに腐っており、倒伏の危険があります。
ネムノキは割れやすい材であり、裂けやすい材でもあります。そのため江崎さんが裂け防止のワイヤーを設置しました。
割れ止め処理する江崎さん
次に、このネムノキの樹幹と樹冠を合わせた重心が道路脇のキュービクル側にあるため、上部の幹にワイヤーを掛けて写真の左側にあるシラカシの幹に取り付けたチルホールで引っ張ってあります。また写真の中央にもロープで引っ張ってあります。これらは私がスローラインで掛けました。
またネムノキの幹元もチルホールで引っ張ってあります。これは伐採後に、伐倒木がキュービクルに飛んで行かないようにするためです。準備ができたので、江崎さんがチェンソーで伐採に取り掛かりました。
株元と幹をチルホールで曳き、チェンソーを入れる江崎さん
目標通りの場所に伐倒しましたが、さすがネムノキです。倒伏の衝撃で幹の各所に幹割れが発生しました。
そうした材を造材する時に、どの位置から切り込むか、上から切るか下から切るかを細かく指導されていました。
伐採した木の造材方法について説明する江崎さん
伐採株を見ると、生えている時には外からは確認できませんでしたが、実際には山側は腐っていて、いつ倒伏しても不思議ではないような状態でした。
伐採した切り株には腐朽菌が蔓延していた
倒れた幹を造材する見本も江崎さん自ら実践して見せてくださいました。
このネムノキは随所に腐朽があり、10m以上の高さにあった幹にも多数腐朽しているため、素直にチェンソーを入れると様々な危険が潜んでいます。
腐朽部分の見分けと、造材時の注意点を説明する江崎さん
ある程度の大きさになったら、参加者全員で幹は長さ30cm程の長さに切って薪に、直径15cm以下の枝葉は短く切って廃棄処理しました。
ネムノキを造材する参加者
さて、今回の講座はチェンソー整備と危険木の特殊な伐採でしたが、次回は刈り払い機を中心とした講座です。次回も頑張りましょう。
以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。
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