ぎふ木育実践者『JIRIさんの図鑑の見方』スキルアップ研修

開催した日:

 木育30年ビジョンに沿って養成している「ぎふ木育実践者」のスキルアップ研修をぎふ木遊館との連携事業で実施しました。

 本日使用した図鑑は林将之さんの『樹木の葉』です。まずこの図鑑でどのように検索するのか図鑑について解説した後に、フィールドでの実践です。林床に落ちている葉を拾ってもらって、鋸歯や蜜腺を観察して樹種同定に挑戦してもらいました。答えはウワミズザクラです。

フィールドでの樹木判別

フィールドでの樹木判別

 

 2つ目は何でしょう。今日は「葉」で見分ける方法を学ぶのですが、つるつるした幹肌の樹木を前に、みなさん四苦八苦です。

 葉っぱ1枚を見て、参加者が「アオハダですか?」とか、「タンナサワフタギですか?」などと発言をされますが、慎重に検索された方から「エゴノキですか?」と正解が得られました。このエゴノキは既に落葉寸前で黄色みが強く、あまりにも印象が違うため多くの方が戸惑いました。

           図鑑片手に樹種検索する参加者

 

 いろいろ説明して移動した先で、次に訪ねたのはよく似た樹木4種類の同定です。

 下の写真で左側は表面、右側は裏面です。表面がよく似ていても、裏面に毛が多くて白っぽく見えるもの、また葉の形が変化しやすいもの、鋸歯の先端まで葉緑素があるもの、そうした特徴から樹種判定できます。

 ちなみにアベマキ、クヌギ、コナラ、クリの順で並べました。

           アベマキ、クヌギ、コナラ、クリの葉(左側は表面、右側は裏面)

 

 さて、午後からは別の方法で観察開始です。

 日本で唯一の国立盲学校である筑波大学付属視覚特別支援学校で実施されている「理科(生物範囲)」の授業では、1年間をかけて植物の葉や動物の骨格標本の観察を行い、指先から感じ取った大きさや形、表面の手触り、へこみやふくらみ、固さや柔らかさ、匂いなど、気づいたことから言葉にする授業をされています。一部は『心が躍る生物教室』の名で配信されていました。

 この盲学校で実施している表現を応用させてもらって、自分たちが同定した樹木に「自分たちオリジナルの名前」を付けてもらって、他の人に伝える観察会を行いました。

              自分たちが名前を付ける樹種を探す参加者

 

 まず自分たちが選んだ樹種の同定です。今回は2人1組になって、樹種を選び、枝と葉を採取してもらって同定と観察をしっかりやってもらいました。

       自分たちが選んだ樹種を同定して特徴を記録し、自分たちだけの名前を考える参加者

 

 部屋に戻ってから5組の参加者に、自分たちが採取して名付けた名前を発表してもらいました。

 「ツルツル、ツンツン、パキパキ、ブツブツ」という名前を付けた組もいましたが、このレベルの名前では樹種同定にはたどり着けません。そこでその樹種の特徴も発表してもらって、樹種同定に挑みました。

        各グループが考えた樹種名から樹木を推測する

 

 5組のうち2組がサカキで、他の組はクスノキ、ミツバツツジ、リョウブでした。

 普段はしっかり見ることなく、上辺だけ見て見た気になっている私たちですが、ミツバツツジの葉の裏側をよく見ると「網目模様」が分かりました。

       5種類の樹木についてのネーミングから、その樹木の特徴を見る

 

 観察が終わったところで、各樹種ごとに由来や利用のされ方、見分けのポイントなどを解説しました。

 サカキはどこを見れば一目瞭然なのか。 そして岐阜県南部ではサカキが生えていますが、郡上市北部や飛騨地域ではソヨゴを代用とし、郡上市の白山中居神社や高山市日和田の一位森神社、河合町天生湿原の匠屋敷などではアカミノイヌツゲを代用とし、東京などではヒサカキを用いることを解説しました。

          サカキの特徴を説明するJIRI

 

 次に木材組織を知るため、広葉樹の道管組織の組成などによって、環孔材、散孔材、放射孔材があることを説明し、各自が採取した樹木の枝を10cm長に切ってもらって、その枝にシャボン液を付けて吹いてもらいました。

         環孔材であるクリの枝にシャボン液をつけて通導組織を見る

 

 樹種によってはシャボン液の影響で「泡」が出て、それが連続したアワアワ状態になりました。この道管を空気が通って泡が出ることから、樹木の木部を水分が移動することを確認できるのです。

          シャボン玉ができるかどうか確認する参加者

 

 最後に各自が選んだ樹木、クスノキ、ミツバツツジ、リョウブ、サカキの枝で「思い出のクラフト」づくりをしてもらいました。

            最後に自分たちが名前を付けた樹木でクラフトをする

 

 作るものはもちろん人様々、机に置くオブジェやキーホルダー、色鉛筆など、それぞれの樹種の樹皮や木口面、板目面などが見えるようにして、その樹種の特徴を記憶に留めるようにしました。          

          家族の分までクラフトする参加者

 

 さて、本日の研修は「図鑑の見方を中心に研修して欲しい」というご依頼に沿っての内容でしたが、今回で3年連続の「ぎふ木育実践者スキルアップ」研修でした。

 いつもは木製品という加工品を利用して活動されている「ぎふ木育実践者」の方々ですが、今後は樹種ごとのバックグラウンドも理解した上で、より意味深い木育活動につなげて頂けるものと信じています。

 以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。

 

 

 

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