morinosカフェVol.10 日中環境教育事情~草の根市民団体の挑戦 開催しました。

開催した日:

6/5(日)、今年度初めてのmorinosカフェは久々に対面での開催となりました。参加者は4名と少なかったのですが、じっくりと対話することができました。

朱恵文さん

ゲストは日中市民社会ネットワークのファンシーこと、朱恵文さん。冒頭簡単に自己紹介をしていただきました。
朱さんが生まれたのは日中が国交回復した翌年の1973年。当時の中国では、戦後驚異的に復興して経済成長を続ける日本は素晴らしいと紹介されていたと言います。特に1985年に開かれた「筑波万博」では、ロボットが紹介されており日本の科学技術の素晴らしさが印象的だったそうです。

1980年代から本格的に始まった中国の改革開放政策では、海外の新たな思想を積極的に取り入れており、自由な風潮で小学生時代を過ごしました。今では交通安全や治安上の理由から子どもだけで外で遊ぶことはないのですが、当時の上海はまだ子どもが外で自由に遊べる時代でした。夏休みには2か月、田舎の川で泳いだり、畑に入ったりして過ごしたことが今でも鮮明に覚えており、子ども時代の自然体験は大切だと語ります。

朱さんが来日したのは2001年。以前から興味があった日本に暮らし、日本をもっと知りたいと思っての留学でした。ICU(国際基督教大学)で市民社会について学ぶ中で、市民活動に関わり始めました。

以下、朱さんの話の概要です。

なぜ中国で自然教育が注目されるようになったのでしょうか。
今、中国で「996」という数字が話題になっています。これは何を意味する数字でしょうか。
実は「朝9時から夜9時まで、週6日間働く」という過酷なビジネス競争を表しています。また大都市では住宅価格が高騰しており、若い人たちは家を買うことができず結婚できないことが問題になっています。
若い人たちは経済的自立を目指して頑張っていますが、競争社会で多くのストレスを抱えています。

そんな中、中国でも田舎暮らしが注目されており、政府や企業も環境を破壊する経済成長から、持続可能な発展へシフトするようになってきました。
政府が「生態文明」を掲げ、自然環境と経済成長の調和を図るように変わってきました。

2008年に起こった四川大地震は、約7万人あまりが亡くなる大災害でしたが、日本の自然学校のネットワークが被災地支援に関わり、そこで私は日本エコツーリズムセンター代表の広瀬敏通さん(ホールアース自然学校創設者)と出会いました。日本と中国の自然学校の本格的な交流は2010年から始まりましたが、その背景にはこのような被災地支援の経緯があったのです。

2011年3月11日。私が事務局長を務める「日中市民社会ネットワーク」の法人登記の日、東日本大震災が発生しました。
既に自然学校での研修経験があった私は、自身で被災地にボランティアに行ったり、日本の自然学校ネットワークが行う被災地支援をリアルタイムで中国に発信したりしました。
その中で、日本の自然学校は災害支援をするなど単に自然体験を提供するだけでなく、社会課題解決に取り組むことがとても印象的でした。

2012年からJICAの草の根技術協力の一環で、中国における地域密着型自然学校づくりのための人材育成およびネットワーク形成プロジェクトが3年間行われました。
この中で、日本型自然学校の特徴は、地域に密着した活動であることが注目されました。

オンライン交流

中国から5名の研修生が、日本各地の自然学校で実際に暮らしながら実地研修を行い、中国でのネットワーク立ち上げの中心メンバーとして今も活躍しています。2020年に中国で開かれたオンラインの自然教育フォーラムでは、当時のメンバーが研修の様子を振り返る対談を行いました。
「日本の自然学校で学んだことは何か」という質問に対し、
・自分を大きくするよりも、人を育て、たくさん仲間を増やすこと。
・何のために実施するのか、理念をはっきりさせること。
と話していました。

中国では里山生活を実践し、循環型の暮らしを体験する自然学校、森のようちえんの活動も行われています。写真だけ見ると日本の自然学校の風景と似ていますね。
日本で研修を受けたメンバーが言っていたのですが、「雑用にこそ神髄がある。活動の場を人任せにせず、自分たちで管理することはとても大切だ。」と。雑用大事主義を実践しているそうです。

ところで、中国の自然学校は女性がやっていることが多いです。
これは自然学校の収入が少ないため、伝統的に男性が家族を養わなければならないと考えられている中国では、男性はまだまだ少ないからです。

2012年以降、中国の自然学校リーダーが日本の自然学校を訪れ、様々な研修を行いました。
特にOJTと呼ばれる、実地研修はとても大きな学びになったと言っています。

中国の子どもたちが、日本の自然学校プログラムに参加することもあります。
日本に対してネガティブな印象を持っている子どももいますが、自分の目で見て、体験することで印象が変わった子どがたくさんいます。

この2年間、コロナ禍で相互の交流が途絶えているのは残念です。私自身も家族に会えていません。
コロナ禍で分かったことは、リアルで交流できることが決して当たり前ではないということ。
でも、交流を重ねて積み上げたつながりは、確実に残るということも実感しました。
コロナ禍で深刻な影響を受けた日本の自然学校を支援しようと、クラウドファンディングに中国から支援金が送られました。手紙を書いて送ってくれた子どももいました。

雲水自然学校

今、「雲水自然学校」というオンラインでの中国人向け研修を行っています。
雲水には、「雲の上」という意味もありますが、いつか雨になって地上に戻るという意味を込めて名付けました。
みんなカメラ越しでもつながっているなと感じています。

地球市民村

自然学校は人と自然、人と人の関係性をつくりなおす活動だと思います。
理念で言うと「地球市民を育てる活動」なのかな。
自然学校は、すべての人に必要だし、すべての人が自分らしく好きなことができること。楽しく幸せに生きることができること。これを実現するために、これからも活動を続けていきたいです。

今日はありがとうございました。

【参加者の声】※アンケートより

・朱さんのお話を聞いていて朱さんの生い立ちや、ひとつひとつの中国の自然学校のこと、ホールアースの広瀬さんのことなど(エコセンのお話とか)も印象的でした。
・今からしていきたいことの参考になりました。

報告者:大武圭介(ウォーリー)NPO法人ホールアース研究所

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