フクロウが棲む森をつくってみよう 実施しました
開催した日:
春が日に日に近づいてきた3月19日(土)、6名の参加者と共に「フクロウが棲む森をつくってみよう」を実施しました。
ゲストは、トヨタの森でインタープリターを務める、「ヒゲさん」こと杉山時雄さん。
35年以上にわたってフクロウの生態を観察し続けている、まさにフクロウの達人です。
冒頭、杉山さんから普段フィールドとして活動している「トヨタの森」について、スライドを使って紹介していただきました。
トヨタの森は愛知県豊田市にある里山で、1997年にオープンした環境学習施設です。全体で45ヘクタールもあり、このフィールドで森づくり、生物の調査、そして様々な教育活動を実践しています。
中でも特徴的な取り組みとして、フクロウやムササビといった里山に暮らす生き物の巣箱を設置し、中にカメラを設置してリアルタイムで観察できるような仕掛けを取り入れています。
それまであまり知られていなかった、フクロウやムササビがどのように繁殖をしているのか、何を食べているのか、といったことを映像を通して理解できるようになっています。
「本物を見ること、巣箱を通して繁殖の様子を知ることが大事。」と杉山さんは言います。
トヨタの森を訪れる子どもたちは、本物のムササビやフクロウを見て、とても驚き、心に残ると言います。
巣箱以外にも、敢えて草を刈り残して小鳥やネズミの隠れ場所にしたり、岩を積み上げてトカゲやヘビの棲みかを作ったりと、生き物を観察できる様々な工夫があります。
午後からはいよいよフィールドワーク。
杉山さんと一緒に演習林を歩き、生き物の痕跡や気配を探します。
イノシシやシカの食痕、ムササビの巣、産卵したばかりのヒキガエル、、。
視点を変えてみると、いろいろな生き物が棲息していることに気づきます。
演習林から戻ってきて、いよいよ森づくりの作業と巣箱の設置に取り組みました。
今回設置したのは、フクロウ用3個、ムササビ用1個の計4個。
それぞれ高さ4m前後の樹に設置し、フクロウやムササビが活動しやすいように飛行の邪魔になりそうな枝と、餌場となりそうな地面付近の草を刈り払いました。
杉山さん曰く「巣箱の高さから『フクロウの道』が見えるので、是非見てほしい。」とのこと。
たしかに、森の中にフクロウが飛べそうな空間が広がっていました。
設置後、室内に戻って杉山さんから改めてフクロウについて話を聴きました。
漢字で「木の上の鳥」と書く梟。
里山の猛禽としてなじみが深い野鳥ですが、最近ではエサ不足からか、愛知県では1度の産卵では2個が多いとのこと。また、従来巨木の樹洞を繁殖場所に使っていたのですが、近年ではそうした巨木がほとんどなくなり、代わりに擁壁の穴や、捨てられている洗濯機の中など、意外な場所での繁殖が確認されているそう。
今回、木製の巣箱に加えて、プラスチック製のごみ箱を利用した巣箱も設置してみました。
杉山さん曰く、フクロウは素材よりも場所にこだわりがあるようで、気に入った場所だと巣箱を取り換えても営巣するとのこと。
今回設置した巣箱をフクロウが利用するのは、早くても来年の繁殖シーズン(3月以降)となります。設置しても利用するのはせいぜい3割程度と言われており、果たしてフクロウが入るかどうかはわかりません。
ただ、フクロウの生態を知って森を見ることで、これまで気づかなかった様々な視点や、他の生き物とのつながりを意識することができるようになったと思います。
最後のふりかえりで、参加者から「今日経験したことを活かして、自分のフィールドでできることをやっていきたい。」とのコメントが出ました。
morinosでは、これを機に継続してフクロウやムササビ等、野生動物の生態を調査していき、野生動物をきっかけとして、多くの人が森への一歩を踏み出す機会を増やしていきます。
【参加者の声】※アンケートより一部抜粋
・印象に残ったことはたくさんありすぎて一言で言えないのですが、フクロウの巣箱を作るにあたって、巣箱そのもの以上に、設置場所や通り道、食べ物、森全体のことなどを見る視点が大事であることを学べたことがよかったです。そして、いろいろなものが連鎖し、関わりが大切でありつつも、デリケートに考えすぎないことも大事であるように受け取りました。
・豊かな森を維持する上で大切な、生態系ピラミッドの頂点であるフクロウなどが生育できる環境を整備する視点を感じました。
報告者:大武圭介(ウォーリー)NPO法人ホールアース研究所
休館日:火・水曜、年末年始(休館日が祝日の場合、翌平日が休館日になります)
Phone : +81-(0)575-35-3883 / Fax:+81-(0)575-35-2529