見つけた! “新”林業〜 林業経営者・原薫さんと森を歩きました!

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今回はズバリ、「新しい林業を考える」をテーマに、ゲストと一緒に森を歩きました。

ゲストの原薫さんは、長野県松本市の株式会社柳沢林業(以下、柳沢林業)の代表取締役を務めています。柳沢林業は「信州・松本平の豊かな風景をつくる」をモットーに、従来の林業会社の枠に囚われない、様々な取り組みをしています。

原薫さん

 参加者は岐阜県内外から集まった20代から50代までの10名。直接林業に携わっている人もいれば、自営業者、学生、公務員等と、まさに里山のような多様なメンバーでした。

原さんと森歩き

 全員で自己紹介からスタート。どこから来たか、何をしているか、今日はどんなことを期待しているのか、といった定型質問に答えてもらいました。共通しているのは、森の新たな活用法を模索して「もがいている」ということ。悩みを共有することで、徐々に打ち解けた雰囲気になっていきました。

 原さんからは、2021年度グッドデザイン賞を受賞したことを受け、まとめた資料を基に、柳沢林業の取り組みと、原さん自身のこれまでを簡単に紹介いただきました。

 環境問題に興味があり、農学部に進学した原さん。ただ、環境問題は大きすぎ、何をどうすればいいのか分からなかった中で1冊の本に出合いました。「木を読む―最後の江戸木挽き職人」(林以一著)を読み、日本の木の文化、人と自然の関係性=人も自然の一部、ということを知って衝撃を受けたそうです。

 卒業後、静岡市井川地区(大井川の源流部)の森林組合に就職した原さん。井川で暮らす中で気づいたのは「山って豊かなんだな」ということ。その後、縁あって松本に移住した原さんは、柳沢林業に就職します。現在社長を務めている原さん自身、林業をしているというよりは「山と人を活かす仕事をしている」と思っているとのこと。

原さんと森歩き

 自己紹介の後、アカデミーの演習林へのんびり歩いて入っていきました。途中、森のようちえんの子どもたちとすれ違い、こうした空間利用もありですね、と話しながら、拠点として活用している「森の中の四寸傘」を目指しました。

 演習林内では珍しく、平坦な土地にコナラなど広葉樹が残る場所で原さんは語ります。

「今は植え過ぎてしまって森林整備のために木を切りますが、本来であれば、使うことが目的でどの木を切ろうか、というのが正しいのでは。かつて日本では切り過ぎてはげ山になった時代もあるし、今は逆に切らなさ過ぎて荒れてしまっている。これからはどのように森林を活かすのかが、人間に試されているのでは。」

 「森林は遷移を経て極相林(平衡状態)に向かいます。人間にとっての災害も、自然にとっては極相に向かうプロセスの一部に過ぎないのです。最初からこうなったら良いというベストを目指すのではなく、『中今(なかいま)』という言葉があるのですが、今に集中すること。今が幸せなら未来も幸せになると思うんです。」

 笑顔で語る原さんの話を聴いているうちに、参加者の表情もほころんでいきました。

 「山の中に入ると、癒しもあるんですが、枝が落ちてきたりして危険なんですよ。だから今に集中して直感力を働かせることが大切なのです。」

原さんと森歩き

 その後、演習林を下って「山の神」と呼ばれる祠に行きました。ここは巨大な磐座(いわくら)があり、毎年「入山式」と呼ばれる実習の安全を祈願する神事が行われています。磐座を見上げてじっとしていると、谷間を流れる冷たい風が吹くのが感じられました。

 帰り道、林床に赤く実っているフユイチゴに舌鼓を打ちながら、参加者同士、リラックスした雰囲気でおしゃべりを楽しみながら会場へ戻ってきました。

 お茶を飲みながら、互いの活動や悩みを共有したり、原さんへの質問など、終了時間を30分ほど超過しても足りないくらい、盛り上がりました。

 林業現場で日々試行錯誤をしながらも、社員と共に「新・林業」の創出に取り組む原さん。プロセスを大事にし、変化にしなやかに対応する姿は、森の木々のように感じられました。

 

【参加者の声】
・原さんのお言葉で「山があれば豊かである、生きていくことができる」というのが心に残っています。(40代)
・原さんの言葉から、「山に関わる人や林業従事者がもっと増えれば山(森)も世の中も良くなる」と確信しました。不安とか色々あっても頑張って乗り越えることが大事だとも。自分もミニマムに同じようなこと考えやろうとしているので頑張ります。(20代)
・これからの里山整備の運営の仕方についてヒントを頂けて、次の1歩を踏み出せるきっかけになりそうです。自分達では小さな事でも知らなかったり、気づけないことが沢山あるので、とても有難い機会でした。(40代)

 

報告者:大武圭介(ウォーリー)NPO法人ホールアース研究所

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