三戸ちゃんの『木読』講座
開催した日:
幼児向け自然体験活動指導者スキルアップ研修 〜 三戸ちゃんの「木読(もくどく)講座」 危険木の見分け方と木を読む楽しみ方〜 を開催しました。
ずばり木の形や状態を、まるで本を読むかのように解読し、何が起きたか、危険木はどれかなどについてお話ししてくれる樹木医の三戸久美子さん(NPO法人 樹木生態研究会)に、関市公立保育園である田原保育園のみなさんが日常的に森林活動されている現場を舞台に実践的に学びます。
田原保育園の遊戯室で、本日学ぶことをシェアリングしました。
1.V.T.A.について 2.樹木の特性を理解する 3.木の危険性を知る 4.樹種による強弱を知る
の4項目です。例えば3つ目の「木の危険性を知る」なら、①枯れ枝や掛かり枝の理解、②構造的に弱い部分、③腐っている部分などです。
腐朽した部分について見れば、白色腐朽菌に侵された場合は、木部の強度が低下するため生きた組織が強度を増そうと細胞を増やし、結果として全体的に膨らんでくるから腐朽していることが分かりやすい。しかし褐色腐朽菌に侵された場合は、リグニンが分解されていないため樹木は強度低下が少なく、樹木自体が強度を増さなければならないと認識しないため、逆に危険である。
腐りやすいことでも知られるシデ類は木部組織が脆いため、樹皮表面が三つ編みしたような模様が出るほど、組織を絡めて補強しているのがよくわかります。
他にも、クスノキは樟脳が 含まれ、耐腐朽性が強いため、枝が折れても腐ることなく枝痕を巻き込んでいる。しかし枝が長く伸びすぎることも多いため、強風の時にはその枝が折れることも多々あります。だから風が強い時にはクスノキの下では遊ばせないことも考えましょう。
などと簡単な講義を受けていると、子どもたちが「準備で来たよ~!」と声をかけてきたので「森にGO!」です。
森に少し入ると神社があり、その拝殿には子どもたちが神にささげたお供物がありました。
フユイチゴやセンリョウの果実が並べられ、なんとも可愛いので紹介させていただきました。
雨模様でしたが、子どもたちはレインウェアに身を包み、元気に坂道を登って森に入って行きました。
その道すがら、フユイチゴを見つけては美味しそうに食べていました。
森に入ってすぐに樹高20m以上のツブラジイがヒノキと一緒に生えていました。このツブラジイの樹皮表面井付着している地衣類を参考に、成長が劣っているいるため樹皮の新陳代謝が減少していることを予測すること。
樹冠の広がり具合から、この樹木がどのような成長過程をたどったかを解説されました。
台風で斜立したソヨゴに手づくりブランコが設定されていました。
しかしこの木をよく観察すると、何とも危険です。太い大きな枯れ枝が載っていたり、ロープを掛けてある部分の70cm幹元には多くな腐朽があり、その腐朽溝が長さ50cm以上にもわたっているいること。根元から数本生えている幹の中には腐朽が進行してカワラタケが付いていること。などなど、いろんな視点から、様々な危険を示唆されました。
ここではコナラとソヨゴが多く生えていますが、樹種ごとに強度が違うことや、根の深さが違うこと、危険を様々な視点で見ないと分からないこと。また現場の風当たりや、土壌の水分環境などによって、そこにある樹木がどのように成長してきたかをつぶさに解説されました。
幹から出た枝が伸びる時に、枝で作られた養分が幹に戻り形成層が師部と木部をつくり、次いで幹の形成層が師部と木部をつくって、レイヤーのように重なるため、枝の股が上の方に上がって行くように感じることなど、もう話がとまりませんでした。
樹種による樹体の強度について解説する三戸さん
12時40分になっても、森の中で危険木を学んでいる大人に、「もう帰るよぉ~」、「ありがとう御座いました!」と声をかけてくれました。「ありがとう、気をつけてねぇ~!」と声をかけ、木読講座の再開です。
「質問です。光が十分当たる開けた環境で1本立する樹木と、森の中で生育する樹木、どちらが長生きだと思いますか?」の問いには、「光を十分受けて、人が見ると大切にしてくれそうだから、開けた環境で1本立する木」と答えた人。
他には「森では競争もあるけど、他の樹種の落葉などいろんな栄養も貰えるから、森の方がいいとする人」様々な考え方が出てきます。
幹から大きく膨らんで出ているのは枝痕です。この枝痕をよく見ると、バークリッジとブランカラーがよく見えていました。この枝痕はブランチカラーより枝先側まである枝部を樹皮が巻き込んでいることを、詳しく解説してくださいました。
本日は岐阜県内の自然体験施設の職員さん、森のようちえんの保護者のみなさん、公立保育園の保育士さん、自然体験活動指導者の皆さん、大変ご苦労様でした。
以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。
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