【オンラインで実施】morinosカフェVol.8 世界一登山者が多い山を面白い場所に!~都市近郊での人と森をつなぐ挑戦

開催した日:

ゲストの壽榮松(すえまつ)孝介さん(株式会社R.project/ホテル「タカオネ」マネージャー)を招いてのオンラインでのmoriniosカフェ。
参加者が2名と少なかったのですが、高尾山を舞台に、都市近郊で人と森をつなぐ挑戦を、わかりやすく語っていただきました。

1.生い立ち(登山と都会生活への憧れ)
 壽榮松さんは1991年生まれ、京都出身の30歳。妻と娘が1人います。高校までサッカー少年だったけど、18歳の時、兄の影響で登山を始めました。大学時代に本格的に登山を始め、沢登りにハマったそうです。
 都会と大きなモノに憧れて、卒業後は不動産開発会社に入社。都心のど真ん中で、ビルの再開発プロジェクトに3年間関わりました。初めての社会人経験、都会生活の楽しさと大変さを肌で感じ、学んだそうです。一方で金曜日の夜から月曜の朝まで山で過ごし、平日は水曜日になるとだんだん疲れて山に憧れる生活だったそうです。

19歳のころ山にハマる

大手不動産開発会社に入社

2.自然学校への転職
 3年後の25歳、静岡県富士宮市にある「ホールアース自然学校」に転職。
 主な仕事は自然ガイドで、それ以外に野生鳥獣の解体補助、人工林の間伐、土木作業など多岐にわたりました。都会でのサラリーマン生活から一変した3年間でした。
 ところが、自然の中で暮らし、働きたいと思って飛び込んだ自然学校の世界で感じたのは、都会生活と変わらない、「もやもや感」でした。仕事はもちろん、遊びも休みも、仲間との集いも、すべて山・森・川となっていたことに不満はなかったのですが、都会の人に非日常体験を提供する「媒介者」ではなく、もっとアウトドアを日常化できないか、と思うようになりました。

ホールアース自然学校時代

 

3.高尾でのチャレンジ
 高尾は、東京都心から1時間ほどで手軽にアクセスでき、高い自然度と、誰でも訪れられる手軽さを兼ね備えています。そんな高尾を、例えば居酒屋に代わってたき火を楽しむ場所、テレワークのオフィス、アフター5のあそび場等、高尾だからこそ創りだせる場が創れるのではないか。29歳の時、友人に誘われて高尾のプロジェクトに参画します。
 当初の高尾山のイメージは、「人が多い、初心者が多く遭難事故も多い、山としてはどうなんだろう」というものだったとか。
 ところが歩いてみると、裏山や沢が多く、世界的なトレイルランナーがフィールドにしている等、山の懐の広さを実感しました。一方、高尾山は年間登山者数が200万人と言われ、世界で最も登山者が多い山として知られています。しかし多くの登山者の過ごし方は限られたルートで山頂を目指し、昼過ぎには下山し、下山後に名物のソバを食べて帰る…。という定型化されたものばかり。
 駅前の至近にあるホテル「タカオネ」は、従来の定型化された動線に一石を投じようとしています。登山者200万人の1%でも人が動けば、2万人が動くことになり、それだけの数が変われば結構なインパクトを与えることになるのではと考えているとのこと。
 そのために、非日常空間を演出するのではなく、日常にいかに介入するかをテーマにしています。ライバルは丹沢や秩父といった周辺の山域ではなく、週末に立ち寄る居酒屋や映画館となるよう、アウトドアスポットでなく「ちょっと特別な、心地よい時間を過ごしたい場所」を目指しています。

自然体験を日常にのイメージ

4.ホテル「タカオネ」
 ホテル「タカオネ」は5階建で客室は28室です。外壁に木製ルーバーを貼って景観に調和するようにし、エントランスの床面コンクリートには、スタッフが裏山で拾ってきた落ち葉が埋められています。「全部は説明しきれないくらい、こだわりがあるんです。」壽榮松さんは語ります。昼過ぎに下山できる高尾山の麓にわざわざ泊まってもらうために、タカオネで過ごすこと自体を目的に来てもらえるよう考えています。例えば、全客室にアメニティと共に薪を1束つけており、裏庭でたき火が楽しめるようになっています。また、飲食にも力を入れており、地域の農家と契約して新鮮な野菜を入れてもらったり、高尾でクラフトビール製造をしている方にも協力いただき、オリジナルビールも作っています。その他、地域の方と連携した体験プログラムの紹介・提供も行っています。
 コロナ禍でテレワークが広がる中、10時から15時の宿泊客がいない時間帯を中心にテレワークプランも設定しています。

ホテルタカオネの様子

5.WEBメディア「タカオのカタヲ
 ちょっと癖のある名前ですが、想いとしては「高尾山を登るだけでない、新しい楽しみ方(カタ)を発見・発掘・発信したい」というものがあります。高尾周辺で活動する方を取材し、一緒に新しい楽しみ方を体験し、WEBで発信する。例えばドライフードを持って行って山でお湯を沸かして食べてみる、普段読まないような本をアウトドアで読んでみる、、。登るためだけの山から、どんどん新しい発想を生み出していこうとしています。そのために大切にしていることは、スタッフ自身がまず楽しんでみるということ。

タカオノカタヲトップページ
 タカオのカタヲが目指すのは、高尾周辺で活躍する人を通じて新たな楽しみ方を発見・発掘・発信することで、それを通じてどんどん仲間を増やしていくこと。単に取材して活動を紹介するだけでなく、「どのような想いで活動しているのか」「どのような手伝いができそうか」そうした点まで踏み込んでいます。編集は壽榮松さんの他に、家主である京王電鉄の担当者、編集・インタビュー担当者の3人でチームを組んで行っています。
 WEBメディアとしては、ホームページの他に、各種SNS(TwitterFacebookInstagram)も行っており、それぞれユーザーや反応に違いがあります。開業前から情報発信を行っていたことで、既に一定のファンが付いており、リアルな情報発信(チラシや掲示)では届かないような範囲に情報を届けることができています。オンラインとオフラインの融合は面白いと感じています。

個人向けアクティビティページ

【フリーディスカッション】

Q1:開業前から情報発信をスタートしていたが、その中で苦労や成果・メリットは?
A1:事前発信は難しかった。場ができておらず、どのように自己紹介していいかわからなかったので。ただ、既に高尾エリアで活動している人はいて、その人たちとつながり、発信してくれることで知ってもらうことができた。それしかできないから、人とつながることをしようと。一緒に創っていくプロセスを共有することで、仲間になったもらうことができた。

Q2:どのようなメディアを使い、それぞれの活用法は?
A2:ツイッターは拡散性が強く、リツーイト機能で、届かないような人に届けることができた。インスタグラムはもう少し丁寧に見てくれている感じがする。リアルな場として、「タカオネの市」というマーケットを開催するが、ほぼすべての人が「タカオのカタヲ」でつながっている人が出店してくれる。リアルとオンラインをどうつなぐかが課題。

Q3:掲載しているアクティビティはどのように運営しているのか?
A3:予約はあくまで直接ガイドにしてもらっている。これは責任の所在を明確にするため。一方で、予約状況は共有してもらっているので、チェックイン時に予約しているかどうかは分かるようにしており、顧客対応に活かしている。ただ、WEBに掲載しているだけでは意味がないので、タカオネに来た方に届けられるよう、一緒に作っていこうとしている。

Q4:タカオネの主催事業はないのか?
A4:「タカオネの市」のようなマーケットは主催事業だが、あまり増やそうとは思っていない。なぜなら、自分たちが手をかけるより、外部パートナーに活躍してもらうことで価値を高められるのではと思っている。例えば、テントを購入してテント泊プランを作ると、設備投資だけでなく、メンテナンスに手がかかり大変。それよりは、メーカー協賛を得てテントを無償レンタルし、PRしてテント泊の価値を紹介した方がいいのでは。「頑張ること」と「辛さを我慢すること」は別の事。外部を活用することで、クオリティが高く、持続可能な価値を生み出せるのではと考えている。

Q5:主な収入源は何か?
A5:宿泊費が最も大きい。床(場所)貸しは原価がほぼかからず、床=宿泊費の価値を上げることが最も重要。

Q6:閑散期の集客対策は?
A6:平日や閑散期は団体旅行、企業研修の誘致に力を入れている。

Q7:コロナ禍の影響は?
A7:団体の中止や延期もあったが、最近になって都内の利用者が増えている。中止にせずに、何とかやれる場所を探しているのではないか。例えば、奥多摩の小学校が近場だが、高尾で1泊2日の教育旅行を計画している。

開業からわずか3ヶ月のタカオネは、ホテルのオーナーである京王電鉄からも一定の理解を得ているとのこと。鉄道事業者として、沿線の価値向上は大きな課題で、タカオネのチャレンジは、地域と共に新たな価値を創りだしていると評価されているのでしょう。
持続可能な経営にお金は不可欠ですが、最初からそれを求めずに、地域に受け入れられ、一緒に新たな価値を創りだすことが、結果としてビジネスにつながっていくのではないか。そんなチャレンジが各地で広がっていくことで、身近な森が人々の日常につながっていくことを願っています。

【参加者の感想】
WEBサイトを充実させることで、地域の人とのリアルな関係が作られていくというのがとても面白いと思いました。リアルとオンライン、どちらも大切ですね。(30代女性)

報告者:大武圭介(ウォーリー)NPO法人ホールアース研究所


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