グリーンウッドワーク指導者養成講座2020、開催中!
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森林文化アカデミーで2年に1度実施している「グリーンウッドワーク指導者養成講座」、今年も9月から始まっています。
グリーンウッドワークのニーズが高まり、定員10人に対して全国から約70人もの申込みをいただきました。将来、各地域の核として活動していただける方12人を選考しました。
北海道で広葉樹の植林に取り組む市の農林係長、森林組合の木材加工職員、樹木医の資格を持つ林業技術者、森の植物からアロマ作りをする人、四国や九州で地域活性化に取り組む人、里山で茶道用の菊炭づくりに取り組む人、木工家、伝統工法の大工、など、さまざまな形で森や木や地域に関わる仕事をする人たちです。
講座は以下の6科目です。
①グリーンウッドワークの基本(ナイフワークで箸作り)
②森を見る・材料を選ぶ
③スプーンを作る
④器を作る
⑤刃物を研ぐ
⑥椅子を作る(前半・後半)
これまでは主に私(久津輪)とグリーンウッドワーク研究所の加藤慎輔さんが指導していましたが、今年は外部からの講師を増やしました。指導できる人を増やしていきたいという思いと、受講生にいろいろな人の指導法を見て学んでほしいという思いからです。
「①グリーンウッドワークの基本(ナイフワークで箸作り)」の講師は、森林文化アカデミー卒業生で書籍『グリーンウッドワーク』のモデルも務める山路今日子さん。小径木を斧で割った後、さまざまなナイフの使い方を組み合わせて箸を作っていきます。
10数種類ものナイフワークは、スウェーデンの木工家が体系化したもの。上の写真では刃を自分の方へ向けて持ち、手前に引きながら箸の頭(木口)を削っています。こんな削り方もできるのかと、初めて体験する人はみな驚きます。
「②森を見る・材料を選ぶ」のフィールドは、里山の再生・利活用に取り組む美濃加茂市の森。講師は森林文化アカデミー教授の喋る植物図鑑、柳沢直さんです。受講生がグリーンウッドワーク講座を自ら企画するにはまず樹木の同定が必要なので、図鑑を片手に同定技術を学びます。
基本的な図鑑の使い方を学んだ後、柳沢さんが近くの葉を選び「これは何?」。それを受講生が図鑑を見ながら同定します。「ウリカエデかな?」「正解!」。最近はスマートフォンで葉を撮影すると同定してくれるアプリも開発されていますが、表示されたのは「アメリカハナノキ」。まだAIよりも人の目の方が確かなようです。
その後、柔らかい木、中ぐらいの木、硬い木、3種類を伐採します。今回はアラカシ、エゴノキ、タカノツメを伐りました。ここでノコギリの使い方、樹の伐り方も学びます。
近くの「みのかも健康の森」に移動して、伐ってきた小径木を割り、1cm角ほどの棒を削って作っていきます。ほとんどの人が初めて削り馬と銑(ドローナイフ)を使いますが、生木はみずみずしくて削りやすく、とても気持ちが良いのです。
3種類の木の棒ができたら、それぞれに穴を開け、紐を通して結びます。樹種サンプルにもなり、広げれば鍋敷きとしても使えるクラフトアイテムのできあがり。1〜2時間ほどで作れるので、このような講座にはぴったりの作品です。
「③スプーンを作る」の講師は、関東・関西でスプーン作りなどの講師を多数務めている福畑慎吾さん。本業は大阪府能勢町にある人気カフェのオーナーシェフなのですが、どちらが本業か分からないほどの腕前です。
今回は『グリーンウッドワーク』の本の表紙に載っているものと同じ形のスプーンを作ることにして、型紙も用意しました。初めての参加者が多い場合は、自由に作ってもらうより講座の運営がしやすく、質の高い作品ができます。
福畑さんが斧やナイフの使い方を工程ごとに細かく説明して、受講生が実践します。福畑さんは欧米の著名グリーンウッドワーカーの動画などを詳細に研究して、自ら実践も重ねているので、解説や実演が非常に的確です。
講座の合間には、近隣で南京鉋を製作している杉田悠羽さんに商品を持ってきてもらいました。受講生から欲しいというリクエストがあったためです。こういう講座の最中にいろいろな道具を試したり購入できたりするのは、楽しいんですよね(杉田さんは1月のナンキンフェスで講師を務めました)。
そんなこんなで盛りだくさんだった①〜③の講座、新型コロナウィルスの感染防止に気を配りながら、9月19〜21日の2泊3日で実施しました。違う分野のスペシャリストたちがみんなで同じ時間を過ごし、森や木についての知識や技術や思いを共有することができました。
④、⑤の講座は10月31〜11月1日の2日間。この報告もまたさせていただきます。
久津輪 雅(木工・教授)
休館日:火・水曜、年末年始(休館日が祝日の場合、翌平日が休館日になります)
Phone : +81-(0)575-35-3883 / Fax:+81-(0)575-35-2529