地域が元気になるまちづくりセミナー

開催した日:

7月1日、ドイツ在住の村上敦さんをお招きして、「地域が元気になるまちづくりセミナー」が開催されました。

青森から大分まで全国から100人を超える参加者が集まりました。もちろん地元美濃市のかたや、アカデミー卒業生も加わって大盛況な会になりました。

第一部は、村上敦さんによる講演「ドイツで進むエネルギーシフトが地域活性化に与える影響」

最初に、このセミナーの趣旨を整理いただきました。地域が元気になるとはどういうこと?

村上さんの回答は、地域の元気=お金が回っていることは当然ありつつ、これらの経済も含めて、環境、社会の意識が高いことでしょうと。ごもっともです。

人口減少の課題が叫ばれていますが、日本の人口(特に生産年齢人口)が減少していくのはほぼ既定路線で、「人口を増やすこと=地域が元気になる」指標にはなりえないことを確認されました。人口が減っていく中で、どのように地域を元気にするのか。それが今回のセミナーの狙いです。

次に、個人的に見慣れないデータとして、地方交付税不交付団体の一覧が示されました。全国に税金に頼らなくてもやっていけている79の市町村があります。ここを分析するとどのような市町村がお金が回っているかがわかります。企業本社が集中し全国からお金が集まる東京は別として、①発電所がある地域(エネルギー)、②空港がある地域、③産業(特に自動車)がある地域が挙げられそうです。観光単体では1事業体が儲かる部分があるようですが、地域全体の豊かさにつながるのは難しいようです。

このような目標と日本の現状を分析されて、いよいよ本番のドイツでの取り組みです。

いつもながら、バックキャスティングの思考がわかりやすいです。

ドイツでは2050年に脱化石を目指して、段階的に削減目標を決めていました。近いところでは2022年に脱原子力(日本とは対照的です)、2035年に脱石炭、そして2050年に脱原化石です。しかもこれらは、トップダウンの政策ではなく2010年頃からのボトムアップというから驚きです。

目標が整理されると、どのように推進すればよいか見えてきます。エネルギー削減を毎年2.1%進めていけば、2050年には半減しています。ここに再生可能エネで補えば脱化石が完成します。

CoolBizやWormBizなどの服装などの暮らしを変えるのでは、翌年に2.1%減はできるかもしれませんが、さらに翌年は??となると限界がありとてもエネルギー半分にはなりません。(もちろんやる価値はありますが)
そのため、上記の年2.1%減というのは、省エネ建築やPV充電する電気自動車の普及などの社会のインフラを作り替えていくことを意味しています。

そこで、ドイツでの3本の柱が重要になってきます。

まず一つ目は、再生可能エネルギーの推進です。火力や原子力では効率が30~40%程度とロスが大きく、これを置き換えることで18.1%の削減を目指します。

二つ目にEV車の普及です。ガソリンなどの内燃機関の効率の悪さ(20%程度)を再生可能エネで生み出した電気で走らせる(効率80%程度)ことで、13.1%の削減を目指します。

三つ目に建物の省エネです。断熱や省エネ設備などを導入することで、15.9%を目指し、三つを合計すると、約半分の削減となります。

ここで重要なのが、我慢を強いる省エネではなく、今の暮らしの質を維持しつつロードマップを作っているところです。

 

次に、一番の柱になっている再エネの推進ですが、ドイツでは、2018年現在の電力需要の38%を占めています。かなり増えてきています。

現在最も大きいのが、風力発電で15%程度、次いでバイオマス8.5%、太陽光発電6.7%となっています。バイオマスは、これ以上伸びる想定は描いておらず、太陽光発電と風力はうまく組み合わせるといいベース電源になります。(天気の悪い日は風が強い日も多い)だいたい太陽光1に対して風力2程度がドイツではバランスがよさそうでした。

これらの再エネの内、市民、農家、地域で約65%出資しているところが、日本と大きく異なる点で、地域の元気につながるポイントです。

日本では、大手企業や海外企業がメガソーラーなどを設置していますが、これでは海外や東京に資金が流れてしまい、地域ではあまりお金が循環しません。また、一度も現地を訪れず、投資対象とみるだけでは、景観などを考える余地も出てこない現状があり、乱開発や景観を損なうトラブルも多く発生してしまいます。

このあと、美濃市の人口構成やポテンシャルも分析され、何が必要かなど話され、もっと聞きたいと思いつつ、講演が終わりました。

 

続いて第二部は、地元美濃市の美濃市民エネルギーの辻晃一さんと郡上エネルギーの小森さんをパネラーにお招きし、村上さんを加えてパネルディスカッションを行いました。僭越ながら私がコーディネーターをつとめました。テーマは、「地域が元気になるまちづくり」。

会場から40を超える質問シートが集まり、関心の高さがうかがえます。ただ、全てを扱うには90分でもとても足りません。私なりの構成で、地域が元気になるにはどうすればいいかをディスカッションしていきました。

・市民エネルギー会社の出資と今後の展望
・ドイツにおける再エネ開発と景観との兼ね合い
・住居の考え方(村上さんのお住いの家をどのように選ばれたのかなども、興味深い内容でした)
・蓄電池の現状と展望
・キーマンは誰が担っているか
などなど、幅広い視点で議論ができました。会場からも、質問が出たりを充実した時間が得られました。

最後に、今回参加された方が地域を元気にするためにすぐに取り組めることはという質問を投げかけたところ、パネラーから以下のようなアドバイスが出ました。ぜひ実践してみてください。

・エネ消費が多い家電(古い冷蔵庫や電気ポッド、電気温水器など)を省エネ機器に買い替えよう。
・家庭の資産や親の収入など、家族でお金のことを話そう。(日本では、お金の話がほとんどされない家庭が多く、経済感覚が染みついていない。)
・街を構成している一員という事業者意識を持とう。
・電気を見直そう。地域に貢献できる電力事業者に契約を切り替えよう。
・大手ネット通販で購入するのではなく、地域の商店で購入するように心がけよう。
・学生のうちに起業してみよう。
・とりあえず、気になる人に会って話をしてみよう。

セミナーに参加して終わりではなく、まずは、今回のセミナーをきっかけに、なにか行動に移していただきたいと思いました。

准教授 辻充孝

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