子どもたちの安全のために、関市公立保育園の挑戦!

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 みなさん、JIRIです。

 本日、土曜日に岐阜県関市の保育士さん約40名が、自主的に富野保育園に集まり、子どもたちが安全に自然体験するめの危険予知、危険回避について学ばれました。これはmorinosの指導者養成講座であり、出前授業でもあります。

 富野保育園の職員室で今回のスケジュール確認を、関市公立保育園に「チーム森」を統括されている乾先生、長屋先生、市役所の小川さんとしました。

 

 本日のスケジュールは、①室内でリスクマネジメント講座(裁判事例も含めて)、②8人ずつのグループで富野保育園の園児が利用するフィールドで危険確認、③再度、同じコースをグループ発表しながらリスクの共有、④最後に室内で、資料に基づいて、現地の危険なものについてシェアリングです。

 

 最初に、①室内でリスクマネジメント講座(裁判事例も含めて)ですが、講義ばかりではつまらないので、実際の植物(タラノキやヤマウルシ、ヌルデ)で一枚の葉の大きさの確認や、何がどう危険なのかを確認してもらいました。

 また持参したJIRIの救急用品を紹介して、ポイズンリムバーの使い方やダニ対策、毒に関するヒントも説明しました。

 裁判事例では①落雷事例(1996年8月13日、中学校の地区別サッカー大会)、②低体温死亡事故(2009年7月16日、トムラウシ山岳遭難)、③落枝障害事故(2003年8月、奥入瀬渓流の遊歩道事故)、④落枝死亡事故(2012年11月、大垣市のスギ林での落枝事故)についても解説。

 

 

 さて、フィールド確認です。

 ②8人ずつグループになって、富野保育園の園児が利用するフィールドを一周する中で、何が危険予知されるかをグル-プ内共有してもらいます。

 今日は豪雨のため小野川の水位が普段の2倍ほどになっていました。初めて見る人が平常水位がどれほどかを、何を基準に判断すればよいか、どのような危険が潜んでるかも時折ヒントだけ伝えました。

 

 

 先生方は周囲のリスク確認に熱心になるあまり、知らず知らずに一集団となり、密になってしまいました。それにしても関市の保育士の方々の熱意は凄いです。

 

 一周してきたところで、楽しく学ぶために、

 「ここでクズの葉のトッカンがうまくできた先生だけが園庭に入ることができます!」と冗談のつもりでいったのですが、全員が真面目にトッカンに挑戦! どうすればいい音が鳴るのか、どんな葉がいいのか、緑色が濃いのと薄いのではどちらが良く音がするのか、試行錯誤しながら自ら発見してもらいました。

 

 さて、保育園に戻ってトイレ休憩をしてから2ラウンド目です。

 ③既にグループで発見してきたリスクを、もう一周するなかで全員で共有です。

 このフェンスについているツル植物はセンニンソウです。これはプロトアネモニンという水疱性の毒を含んでいます。珍しく感じるかもしれませんが、カザグルマやテッセンなどのクレマチスは園芸品種でもみな有毒なのです。

 

 私の前に生えているのはヨウシュヤマゴボウです。有毒成分はトリテルペノイドサポニンのフィトラッカトキシン(phytolaccatoxin)で、果実と根に有毒成分を含み、食べると 腹痛・ 嘔吐・下痢を起こし、ついで延髄に作用し、けいれんを起こして死亡し、 皮膚に対しても刺激作用があります。

 熟した果実は柔らかく、潰すと赤紫色の果汁が出ます。この果汁は衣服や皮膚に付くとなかなか落ちないほどの染色。この特性のため、アメリカ合衆国ではポークウィード(Pokeweed)、インクベリー(Inkberry)などとも呼ばれています。

 アメリカではかつて着色料として安価なワインなどに用いました。かつてはアラバマ州などの南部地域において、若芽を茹でこぼして毒を抜いて食用としました。

 単に危険な場所や危険植物ばかりではつまらないので、たくさんオオバコがある場所では、オオバコについての解説もしました。

 この足元には、有毒植物がありました。保育士の先生方から、「ウマノアイガタ?」と声が出ました。ほとんど合っていますが、惜しい。 それはケキツネノボタンです。ウマノアシガタはキツネノボタンやケキツネノボタンが好む湿った場所より乾燥地に多く、花の大きさや、果実のトゲトゲがフックしているかどうかでの見分けもお伝えしました。

 キツネノボタンやウマノアシガタは配糖体ラヌンクリン(ranunculin)を含み、葉をすりつぶしたりすると加水分解され、有毒成分プロトアネモニン(protoanemonin)を生じます。

 山にはシキミ(梻)もありました。 シキミの実は植物としては唯一、毒物及び劇物取締法により劇物に指定されています。

 有毒成分アニサチン、イリシン、ハナノミンなど。誤食すると、嘔吐、意識障害、けいれんを起こし、重症の場合は死に至ります。

 

 傾斜したヒノキ、草に覆われた根元をかき分けて見ると、幹の半分が腐っています。この個体のように樹皮に苔などが着生していれば、樹皮の新陳代謝が悪くなっている。つまり元気がない樹木なので、その原因はなんなのかを探るとリスクがみつかります。

 

 関市の保育士さんは本当にみな真面目にメモを取られています。記録もいいですが、実際に自分自身で触れて、発見して、それを楽しく伝えあっていって欲しいと感じました。

 

 山道を歩けば、カエルやヘビ、スズメバチにも遭遇します。その時にどうするのか?それぞれが自分の勤める保育園に戻ってどう仲間に伝えるのかを考えていました。

 「さきほどの場所からここまでの約50m間で何か危険なものを見つけたグループはありますか?」と尋ねると、様々な視点での意見が出る。誰かが説明すれば、みなその方向を見て現場確認!

 

 なんの変哲もない水田脇の舗装道路、ここにも道路側の危険、河川沿いの危険、ヨシやササなどの植物による危険、そしてとどめはマムシの発生です。この季節、晴れると体を温めようと道路近くに出て来るのです。

 

 

 道路脇にはカナムグラがありました。いつも遠巻きに見ているだけの植物、触ってみると細かいトゲ状の堅剛な毛が生えています。子どもたちの柔らかな足がこれに擦られると擦り傷になる。なるほど。

 最後に、④室内に入って、ハード面の危険物以外で、先生たちがなかなか覚えられない植物について復習です。

 ヨウシュヤマゴボウやシキミ、センニンソウ、イヌホオズキ、ヒヨドリジョウゴ、ケキツネノボタン、ウマノアシガタ、ドクゼリ、キケマン、ムラサキケマン、ヤマハゼ、ヤマウルシ、ネザサ、ヨシ、ススキ、カナムグラについて詳細を確認しました。

 先生方には、「知識はあれば良いが知識だけではダメ、もっと重要なのは感動する心を育てること」「ワクワクする体験を通して、楽しく、仲間同士互いに学ぶこと」の重要性をお伝えしました。

 以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。

 

 

 

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