「Calm Carving~心がととのうグリーンウッドワーク」を開催しました

開催した日:

10月25日(土)と26日(日)の2日間、チェコ在住のイギリス人グリーンウッドワーカーのサミュエル・アレクサンダー(Samuel Alexander)氏をお招きして「Calm Carving~心がととのうグリーンウッドワーク」を開催しました。

morinos連携講座としてNPO法人グリーンウッドワーク協会が主催。初日のトークセッションには美濃加茂市で木工房を構える川合優(かわいまさる)さん、2日間の通訳として森林文化アカデミーの木工専攻教授の久津輪雅さんにご協力いただきました。

25日のトークセッションには29名の参加者が集まりました。
まずはサミュエルの今に至るまでのジャーニーから紹介。


彼は幼少期からいろいろな悩みやトラウマを抱える環境で育ち、大人になってからもさらに複雑な社会にもまれ、精神的にうつ状態になっていたそうです。
そんな時にセラピーとして紹介されたのがロンドンの木工サークルだったそうです。
イギリスでは社会的処方(=医療的な治療だけでは解決できない健康課題に対して、地域資源や人とのつながりを「処方」するアプローチ)の試みが1980年代から始まり、2006年以降は全国に広まって現在は国の補助金も受けられるのだそうです。
その後、自らが社会的処方を与える立場となり、これまで1300人に教えてこられました。

 

川合さんも大学時代にうつ状態に近くなったそうで、ワラをもつかむ気持ちでもがいている時に出会ったのが木だったそうです。
日本の木で建築して初めて林業が成り立つとの思いからはじめた、日本の木の再評価につなげるためのプロジェクトSOMAのお話や、茶道の文化のお話、木工作品の価格帯のお話などとても興味深く聞かせていただきました。

サミュエルの提唱するカームカービング(心を落ち着かせる木彫り)と川合さんの茶道具に関するお話など、2人の木への向き合い方や思想の共通点と違いに関心を持った参加者が多く、「対話形式だったからこそ気づけた」という声が目立ちました。
1人の講師による講演ではなく、複数の実践者による対話だったことで、視点が広がり、理解が深まったのだと思います。
トークセッション全体について「内容が充実していた」「とても満足した」「貴重な時間だった」という評価が多く、非常に満足度が高かったようです。

 

続いて、サミュエルによるふくらみのある器づくりにおける、斧を使ったはつり作業のデモンストレーションが行われました。


参加者からは、「美しかった」「妖精のようだった」「所作そのものが印象的だった」など、技術だけでなくたたずまいや空気感への感想が寄せられました。
木やものづくりに対する姿勢、生き方そのものが伝わってきたという声もあり、言葉以外の部分から受け取った学びも大きかったようです。
「もっと2人の深いやりとりを聞きたかった」「時間が足りなかった」という意見もあり、今後への期待の高さがうかがえました。
全体として、知識の共有だけでなく、価値観や態度に触れる時間として強く印象に残るトークセッションでした。

 

26日は申込25名の中から選考で選ばれた10名がふくらみのある器づくりに挑戦しました。


ツーカカムという長い柄のついたフックナイフで器の中をえぐり取り、斧で外側をはつって、ナイフで仕上げます。
この日のためにボールドンキーという固定台を10台新調して、今までにない新しい手法を学んでもらいました。

導入部では呼吸法から始まり、心が落ち着く状態で制作に入ってもらいました。

慣れない作業に戸惑ったり、時間切れで最後の完成までに至らなかったりしましたが、本場のグリーンウッドワークを直接学べたこと、サミュエルから直接教わる体験そのものを大きな価値として受け取ってもらえたのではないでしょうか。
新たな視点や理にかなったプロセスを学べたことで、理解が大きく深まったとの感想もいただきました。
「ふくらみ」の考え方、体の使い方、意識の向け方、時間との向き合い方など、内面的な学びが深く印象に残ったという意見も多くきかれました。
また、技術だけではなく「心・気持ち」を大切にしたものづくりや、人に伝える姿勢を重視したサミュエルの価値観を皆さんと一緒に共有できたと思います。
今後は、自身の作品づくりに生かしたい、復習を重ねたい、将来的にはワークショップや講座として伝えていきたいという前向きなビジョンが多くの方から語られました。

ワークショップ全体を通して「とても楽しかった」「感動した」「忘れられない2日間だった」という満足度の高い声が多く、また参加したい、ぜひ続けてほしいという声も寄せられました。
森林文化アカデミー・morinos関係者の皆様、熱い思いを持ってお越しくださった参加者の皆様、事前準備を含め当日のスムーズな運営に協力していただいたスタッフの皆様、トークセッションで気持ちのこもったお話をしていただいた川合優さん、非常にわかりやすい通訳で皆さんの理解を深めるお手伝いをしてくださった久津輪さん、そしてはるばるチェコから美濃まで家族で来てくださったサミュエル一家に感謝申し上げます。

NPO法人グリーンウッドワーク協会 小野

  • モリノスfacebookページ
  • モリノスlineページ
  • モリノスYouTubeチャンネル
開館時間:10:00 〜16:00
休館日:火・水曜、年末年始(休館日が祝日の場合、翌平日が休館日になります)
電話番号:0575-35-3883 / FAX:0575-35-2529
Address : 88 SODAI, MINO-SHI, GIFU-KEN, ZIP #501-3714 JAPAN
Phone : +81-(0)575-35-3883 / Fax:+81-(0)575-35-2529
岐阜県立森林文化アカデミー
ぎふ木遊館
Sustainable Development Goals