『ヒマラヤ8611m 無酸素K2登頂で気付いた自然とのつながり』を開催いたしました

開催した日:

登山家・戸高雅史氏を講師に迎え、極限の山々から身近な自然まで、「いのちの瞬間性」「自然との共振」を学ぶプログラムを開催しました。
午前中の講演で「今、ここ」に意識を向ける重要性を学んだ後、午後はmorinosの森へ。
参加者は五感を研ぎ澄ませ、自然と一体となる貴重な時間を体験しました。

午前の部:極限の経験から学ぶ「一瞬の無限」

プログラムのはじまり
戸高さんは、ヒグマの皮のジャンベ(太鼓)を取り出し、おもむろに演奏を始めました。ヒグマの皮のジャンベは和太鼓のような響きがし、その響きが参加者をつつみこみ、参加者を一気に、戸高さんの世界へ引き込みました。

ジャンベを叩く戸高さん
ジャンベを叩く戸高さん

戸高さんは30年以上前からヒマラヤ登山を始め、ピーク時には16年間連続でヒマラヤへ登り続けたということでした。その16年で、戸高さんの登山の目的が「上」を目指すことから、「山(土、草、水の流れ、雪、人の痕跡を含む山)というワンダーランドな世界を楽しむ」ことへ変化した経緯が語られました。

お話しの中で印象的だったのは、K2無酸素登頂、ブロード・ピーク三山のトラバース、エベレスト(チョモランマ)で山頂登頂を断念した体験談でした。ブロード・ピークで極限の状況下で食料を落としてなくした瞬間に「過去や将来のことを忘れる『ゾーン』に入った」というお話、「思念に過去が入ってこないと悲しみがなく、悩むとか悲しむといういったことはエネルギーを消費する」という『一瞬の無限』というお話。そして、それを活かすなかで語られていた哲学的な言葉。全てが印象的なものでした。

ブロード・ピークで食料をなくした話題
ブロード・ピークで食料をなくした話題

この哲学や考え方は、戸高さんが撮影した、富士山で地嵐に巻き上げられた雪のシャワー、葉山の海岸での沐浴、丹沢の源流の無もなき滝、様々な自然の映像を通じて「生き物としての感覚を呼び覚ます序章である」として話されました。

午後の部:morinosの森で実感した「共振」の効果

午後の部は、morinosの森での自由なフィールド体験となりました。

快適な歩き方を教えていただいた

快適な歩き方を教えていただいた

2〜60代の参加者11名で松葉に覆われた崖を登り、沢沿いの秋の木漏れ日が差し込む広場へ。戸高さんの声掛けで、各自がマットの上に横になり、20分間、心のおもむくままに自然と交流する「ソロの時間」を過ごしました。

 

「ソロの時間」を過ごす

「ソロの時間」を過ごす

この静かな体験こそが、日々の忙しさから解放され、自然の持つ無限の振幅を体感する場となりました。

1. ストレスからの解放と「気持ちの安定」

意識的に雑念を払い「今、ここ」の感覚に身を委ねた結果、心の変化を実感する参加者がいました。

「私は普段、過去のことを考えて未来を考えて、いろいろ悩みどころがあって、今あえてああいう時間を作って、今この瞬間を見るってことができました。すごく自分の中でこう気持ちが安定するような贅沢な時間を過ごせました。」

森との共振

森との共振

2. 五感の覚醒と「見えないもの」への気づき

森の静寂の中で感覚が研ぎ澄まされ、日常では気づかない自然のメッセージを受け取りました。

「20分間の時間が、虫の羽音の先に、なんかいろんな音がまた混ざってた。(中略)鳥の声があったり、風の音があったりとか。そうやってじっと耳を傾けてみると、色々と気づかないものに気づけるとか、見えないものが見えてくるっていうのも改めてすごく強く感じて。」

 

感性の回復

感性の回復

3. シンプルな生き方への回帰

極限の環境で「(登山で)高度を上げる=削ぎ落とす」ことに気づいた戸高さんの哲学は、参加者にも影響を与えたようです。

「以前の登山は心は頂上を目指すだったが、今日、自然の中での時間は、何もせず、空気やフワフワ感を感じられて気持ちよかった。」 「過去とか、未来とかを考える時間が多い。今を見る瞬間が少ない。削ぎ落として、今を見る瞬間を感じたい。」

感性の回復

今を見る瞬間

日常でも得られる「一瞬の無限」

参加者のアンケートの言葉からは、極限の登山体験から得られた戸高さんの哲学は、morinosの森での体験を通じて、参加者一人ひとりの日常へとつながって行ったことがうかがえました。

一般のほとんどの方は、標高6000m以上のデスゾーンへ行くことはできないのですが、参加者の皆さんは、morinosの森で過ごした時間で、「一瞬の無限」に出会えたようです。

森を歩く参加者

森を歩く参加者

極限のなかに行かなくとも、意識の静まった世界は一瞬一瞬、生まれてゆきます。


さて、このプログラム。最後に、戸高さんがウクレレを、参加者がジャンベを演奏するセッションで「共振の場」を体現してくださいました。
この日、最高の笑顔が生まれたのも、この瞬間でした。

最高の笑顔の瞬間

最高の笑顔の瞬間

参加者全員が、この「修行」ではなく「訪れる一瞬の『ギフト』」とともに、全身全霊で生きる感覚をmorinosの森から持ち帰ったのではないかと思っています。

報告者:小川 カツオ(森の知恵共創共同事業体)

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