『地域に根ざした林業で地域つくり』を開催しました
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【森と人とお金が循環する自立した暮らしと仕事づくり】
講師には、愛知県岡崎市の山間部、旧額田町を拠点に、森と人とお金が循環する自立した暮らしと仕事づくりを実践されている唐澤晋平氏をお招きしました。講演では、林業の経験がない「よそ者」として移住した唐澤さんが、いかにして地域で必要とされる事業を立ち上げたかについて語られました。
唐澤さんの活動は、単なる環境保全にとどまらず、森を活かした生業づくりにあります。
2018年に設立した奏林舎では、「森を調べる(山林調査、境界記録) 」「森を手入れする(民有林の間伐) 」「森を活かす」という3つの柱で活動を推進されています。
また、2015年に始まった「木の駅」プロジェクトでは、出荷された木材が地域通貨と交換され、それが地域の商店で利用される仕組みを構築されました。このプロジェクトは2015年から2024年の10年間で、累計10,309トンもの木材を出荷し、6,175万円分の地域通貨を発行するなど、具体的な成果を挙げられました。
2022年からは(株)もりまちを設立し、地域材のストック、商品開発、流通促進を本格的に開始しました 。ここでは、三菱自動車との「企業の森づくり活動」や、中山間地への移住促進事業にも取り組まれています。さらに、2025年には(一社)And Forestを設立し、最新技術を活用した林業の6次産業化に挑戦されています。
唐澤さんの活動の根幹には、「補助金に振り回されない」という強い哲学があります 。補助金に頼りすぎると、書類仕事に追われ、本来の目的から外れてしまうためです。
また、唐澤さんは、木の駅プロジェクトの運営費を岡崎市などからの寄付で賄うことも含めて、市場原理の中で持続可能な収益モデルを追求しています。
10年を振り返り、「売り先から作る」ことや、「強みを活かしユニークな価値を作る」ことの重要性についてもご紹介いただきました。
唐澤さんの活動を支えてきたのは、多くのキーパーソンとの出会いです。最初に関わった佐々木豊志さん(くりこま自然学校)から環境教育や冒険教育を学び、林業においては大場隆弘さんや、さいかい産業の古川さんを通して、木質ペレットストーブのビジネスモデルを学び、未利用資源から価値を生み出す発想を得ました。
その他様々な方々との出会いからビジネスとしての視点を養われました。最近では、市役所から「もりまち」へ出向中の加藤亮さんや、木俣さん、山本恵一さんなど地域の人々との出会いが、事業を具体的に進める大きな力となりました。特に加藤さんは「もりまち」の設立において、官民連携の重要な役割を果たされています。
もともとは環境教育でのビジネスを目指されていましたが、環境教育と里山地域の衰退は時間軸が合わず、「環境教育だけでは食べていけない」という現実を直視しつつ、地域に暮らす人々や企業が自然に関わるきっかけとして、森の活動を位置付られています。唐澤さんの取り組みは、都会の知恵と里山の資源を結びつけ、地域に新たな価値と仕事を生み出す、具体的な挑戦の物語でした。
参加者からは、「地域の中で人を巻き込みながらの活動は、やはり楽しいと思う。 棲み分けやエリアを絞った活動など、納得しました。」などの声をいただいています。
報告者:小川 カツオ(森の知恵共創共同事業体)


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