アカデミー教員プログラム「地図を描こう ―初めての測量体験」を実施しました

開催した日:

 様々な方法を使った測量を体験する講座を3月20日(木・祝)に行いました。講師は森林文化アカデミー林業分野の塩田昌弘さん。林業や森づくりに興味関心がある成人6名が参加しました。

 アカデミー教員になる前に、ログビルダーや素材生産の現場作業員、森林管理会社で現場監督をしていた塩田さん。ふとしたきっかけでアカデミー教員の公募を知り、応募して2023年4月から教員として、山仕事の魅力を伝え続けています。自己紹介で自身の特性を「知りたくなったら調べないと気が済まない、さらには現場に行きたくなる。」と語った塩田さん。最初に測量の起源を身近に感じた一例として、そして憧れと尊敬の念をもってやまない、江戸時代の偉人・伊能忠敬の生涯と、業績を紹介していただきました。
塩田さん

 伊能忠敬(1745年–1818年)は、江戸時代の測量家であり、日本初の正確な全国地図を作成したことで知られています。彼の主な業績は以下の通りです。

・全国測量の実施: 56歳から測量を開始し、17年間をかけて日本全国を歩きながら測量を行った。
・「大日本沿海輿地全図」の作成: 彼の測量データを基に、弟子たちが完成させたこの地図は、当時としては非常に正確で、後の地図作成にも大きな影響を与えた。
・天文学の研究: 測量の基礎として天文学を学び、地球の形状や位置を正確に把握する技術を身につけた。

 伊能忠敬の努力と成果は、現代の地理学や測量技術の基盤を築いたと言えます。彼が50歳を過ぎてから測量を始めたという点で、挑戦に年齢は関係ないことも示しているのではないでしょうか。

 なぜ森林文化アカデミーで伊能忠敬なのか?という問いに対し、塩田さんからは、
・森林も諸先輩方からの贈り物であり、過去から学ぶ必要がある。
・過去を知り、現状の姿を見て、自分が何をすべきかを考え、実行することが重要。
・先人の労の積み重ねの先にあるものとして、「今」を学べる。
と話していただきました。つまり、測量をすることで、その土地の「今」を把握することができ、さらに「将来」を考えることにつながるのです。

 測量にまつわる話を聞いた後は、いよいよ測量体験です。今回は「平板(へいばん)測量」と「コンパス測量」を体験しました。

 平板測量とは、地形や土地の形状を測量するための簡便な方法の一つです。平板(測量用の平面な板)を用いて、地図をその場で直接描く方式です。アリダードという機器を使って目標地点の方角を図り、距離を求めて平板の上に写しとります。今回は「放射法」と呼ばれる、ある基準点を中心として、その周囲に広がる対象物の位置を測定する方法で測量しました。皆さん2人1組でmorinosひろばの周囲に決めた基準点から、7本の杭の位置を測定して地図を作成しました。


平板測量

 次はコンパスを使って同じように方角を測定し、今度は歩測法で距離を測りました。これは伊能忠敬の時代に近いやり方です。先ほどの平板測量の放射法と異なり、1周回って戻ってくると基準点と合わないことがあります。これを「閉合誤差」といい、測量では閉合誤差は小さいことが求められます。歩測のためどうしてもズレが大きくなり、閉合誤差も大きくなりました。


歩測法での測量

 最後はデジタルコンパスを使って測量しました。この方法では、レーザー測距器を内蔵したデジタルコンパスを使用するため、1回で方位角と斜距離、高低角が計測できます。計測したデータを専用のアプリケーションに入力すると、自動で平面図を作成してくれる優れものです。ところが使う前にコンパスのキャリブレーション(校正)を行わないと、正確なデータが取れず平面図がおかしくなるので、注意が必要だということもわかりました。



デジタルコンパス

 全員が初めての測量体験でしたが、それぞれ夢中で取り組み、30分以上終了時間が遅くなっても「楽しかった!」と皆さん満足そうでした。伊能忠敬が50歳を過ぎてから死ぬまで続けた測量の魅力が、皆さんにも伝わったのだろうと思いました。

参加者の声※アンケートより一部抜粋
・道や空き地で測量されている姿を見かけてどんな感じで測量されて図面におとすのかちょっと気になっていました。今回受講させていただき、測量のやり方や赤いポールを持っている人など各自の役割が理解できました。特に計測したデータをPCに入力して図面に反映できるところまで体験することができより具体的に体験することができて良かったです。
・伊能敬忠の地図の話はとても興味深く、実際に測量してみることの意味を自分なりに意識して、午後の実践ができた。

報告者:大武圭介(ウォーリー)NPO法人ホールアース自然学校

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