アカデミー教員プログラム みんなで実験「会議を開いてみた!〜共創でつくる環境教育プログラム」を実施しました。
開催した日:
新しい環境教育プログラムを考える会議を公開型でやったらどうなるんだろう、という実験プログラムを3月6日(木)に行いました。今回は森林文化アカデミー森林環境教育専攻の小林謙一さんとさらに3名のスペシャルゲストも交えて、4人による会議をリアルとオンラインで見守る(観察する)という、初めてのスタイルで実施しました。
保育士、森のようちえんスタッフ、学生など、教育や場づくりに興味関心がある成人16名(うちオンライン参加7名)が参加しました。
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左から、伊藤さん、篠田さん、吉成さん、小林さん
冒頭、小林さんから自身の経歴とアカデミーに入学した経緯、さらには教員になって取り組んでいることの紹介がありました。アカデミーでは、教員が学生に「教える」という一方通行のスタイルだけでなく、「一緒に考える」というスタイルも取り入れています。また、何かを決める一般的な会議の他、新しい発想を生み出すための「企画会議」というスタイルも紹介されました。これは、参加者全員が発言し、発散と収束を繰り返しながら、新たな発想を生み出すための会議です。
今回は「環境教育的視点で、内発的な動機や好奇心を育む、教育プログラムの開発」を目指した企画会議です。小林さんの他、伊藤さん・篠田さん・吉成さんというスペシャルゲストを加えた企画会議を部屋の真ん中で行い、参加者はその周りで観察しながら気づきをメモしたり、共有してみようというものです。どのような展開になるのか、誰もわからない実験プログラムです。

公開企画会議の様子
企画会議で重要なのは、新しいアイデアにつながる「発話量」を増やすこと。そのために、「チェックイン」という方法が有効であると小林さんから紹介がありました。チェックインとは、雑談程度で構わないので今の気持ちを話すことで、話していい雰囲気づくり、メンバー自身に興味を持つ、といった効用が期待できます。共創=共に創りだすという場ではおススメとのことです。
早速4人でチェックインから会議はスタート。それぞれ今の気持ちを話しはじめました。「このメンバーで話せることにワクワクしている」「別の大きな仕事を終えてスッキリしている」「ワクワク・ドキドキ、少し落ち着こう」などそれぞれ違いましたが、発話することで話しやすい雰囲気になりました。
最初に伊藤さんから話題提供していただきました。伊藤さんは海上自衛隊の幹部候補生を経て、教育NPOに転職した異色の経歴。中高生の探究型プロジェクトの伴走を経験し、2021年に岐阜市を拠点に中高生の探究学習支援と、地域サポート体制をコーディネートする団体「一般社団法人ココラボ」を設立しました。
高校生の探究活動の中で伊藤さんは、大人の視点でやらされている、または自身の中から湧き出た気持ちで取り組んでいないのでは、と感じることがありました。その一方、森林文化アカデミーの学生はとことん興味を持って探求しており、この違いはなぜ起こるのか、どのようにしたら「自分事」として学びと行動を往還させることができるのか、といった問題が提起されました。
篠田さんが続けてコメントしました。
「私は大学からが楽しかった。なぜなら『何を学んでもいいよ』と言われたから。高校生までは学ぶこと(≒大学受験のための勉強)を決められていた気がする。これは内発的ではないな。学ぶことの面白さは大学で分かった。」
また、篠田さんからは国際比較データから、日本の子どもは自己肯定感が低く幸福度が低いこと、昨年自殺した児童生徒が多いことの2点が問題点として指摘されました。篠田さんが代表を務める「一般社団法人ヒトノネ」では、10代の子どもがクリエイティブな活動ができる居場所「クリエイターズ・クラブ」を作っています。ここで出会った高校生が音楽ユニットを作り、楽曲制作も行っています。「学校と家庭以外で安心して過ごせる場所が必要なのでは」と篠田さんは言います。
子どもたちの「やりたい」から、「森キャンププロジェクト」が始まり、助成金を獲得して森林文化アカデミーでキャンプを行いました。キャンプ後、子どもたちはめちゃくちゃ仲良くなり、表情も変わったとのこと。森で過ごすことを通じて「どうしようもならないけど、どうにかなる」ことに気づいたのではないかと、篠田さんは言います。
最後に吉成さんからも話題提供をしていただきました。
「環境教育の分野で岩手県で17年間活動してきました。その後、岐阜に来て図書館の仕事を9年間やりました。ずっと居場所づくりに携わってきました。森が絵本とファンタジーをつないでくれた。」と、自身の経験に基づいた話を紹介していただきました。
吉成さんは絵本を持ちながら子どもと一緒に森に入ったらどうなるだろうという発想で、「森の小人探しにいこう」とスウェーデンで購入した本を使ったプログラムを開発しました。森の中に小さなベッドや干した布団を用意し、小人の世界観を子どもたちと一緒に楽しんだそう。真剣になって森で遊ぶことを通じて、知識として知っていることでなく、感覚としてわかることの大切さを実感したそうです。
3人の話題提供を受け、小林さんから
「表現する、気づく、体験する等といった時に、森や自然は有効ではないかという説があります。でも森や自然は、多様で変化し続けるため、非効率でコスパ(コストパフォーマンス)やタイパ(タイムパフォーマンス)が悪いよね。だからこそ、逆に可能性があるのでは。」とコメントがありました。
話は様々な方向に広がりつつも、以下のキーワードが今回のテーマである「環境教育的視点で、内発的な動機や好奇心を育む教育プログラム」のポイントになりそうです。
・演劇的想像力/創造力が重要
・コスパやタイパが悪いこと(効率を求めない)
・身体的な楽しさが大切
・大人が真剣に想像/創造/表現すること
・失敗しても楽しめるようなフォローが大切
議論は尽きませんでしたが、予定時間となったので一旦公開会議は終了となりました。その後は質疑応答などが続き、終了予定時間を大幅に超えてプログラムは終了となりました。
今日の会議で出てきたキーワードやアイデア、岐阜で実践されているゲストの方々と共に、いつか実際のプログラムやプロジェクトに活かされるに違いありません。
参加者の声(アンケートより抜粋)
・活発な議論ができる会議の運営に興味があったのですが、ゲストの皆さんの取り組まれている内容に会議の運営以上に、今後の自らの活動の参考にさせてほしいこともたくさん出てきて、とても有意義な時間でした。会議の運営についても、チェックインや情報提供の時間の大切さや、気づきの確認などとても勉強になりました。自分の仕事上の会議でも取り入れてみたいなと思いました。
・今回はキックオフミーティングだったが、プロジェクトが決まっていくこの後の流れ、雰囲気を知りたいので続きをみたい。
・「チェックイン」「I(わたし=主語)で話す」「語り合える場」、、60代半ば女性ですが、ようやくこの頃会議での発言を心置きなくできるような環境になってきた気がします。整ってきた環境を生かせるよう、場に出ていく気持ちを育てていきたい。それは日々の生活で育まれるのだなぁ…。幸せな世界となりますように。
報告者:大武圭介(ウォーリー)NPO法人ホールアース自然学校


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