morinosカフェVol.21 「飛騨の建築家がチャレンジ中!地域循環するデザインのポイントとは?」を実施しました

開催した日:

 21回目を迎えたmorinosカフェ。ゲストを迎えてざっくばらんに話す交流の場です。今回は高山市在住で「澤秀俊設計環境/SAWADEE」という設計事務所を運営している、澤秀俊さんをゲストに迎えました。2月28日(金)の夕方、13名が参加しました。

 前半は澤さんから、自身のこれまでの歩みと今回のテーマである、「地域循環を生み出す建築」について話していただきました。
 大学で建築を学んだ澤さんは、卒業後ドイツ、東京、フランスと都会で様々な建築設計に関わってきました。華々しい建築の世界で活躍し始めた矢先、2011年3月の東日本大震災を迎えます。当日、東京で暮らしていた澤さんは、エネルギーや暮らしのことを根本から考え直すきっかけとなったと語ります。
 2013年に百姓に憧れて京都府の田舎に夫婦で移住し、自然農を実践。その後2014年~17年にかけて、ベトナムでの緑化建築・竹建築の設計プロジェクトに関わりました。また同時期、高山市で間伐材利用を中心とした自然エネルギー活用と地域の活性化に取り組む「NPO法人活エネルギーアカデミー」事務局を、2014年から10年間に亘って担当しました。
 そして2018年、地元高山で「地域循環を生み出す建築」をテーマに「澤秀俊設計環境/SAWADEE」を設立して現在に至ります。

 澤さんは建築設計の専門家ですが、自己紹介の後の話は、荒廃する里山をどのように再生させるか、という話題が続きました。
「活エネルギーアカデミー」の活動に関連するのですが、問題解決のポイントは、
1.間伐材の定期物流システム(切った木を自力で集めるのは大変)
2.地域通貨の発行と運営(経済的メリットをどのように生み出すか)
3.木材を根元から葉先まで余すことなく利活用する
4.木材を建材に加工し、木造建築に使う
の4点だそうです。

 中でも澤さんの強みは、目の前にある木材をどのように使えば、依頼された建築ができるのか、具体的に提案できる豊富な経験と設計力を持っていることです。

 後半は高山市周辺でこれまで手掛けた建築設計を例に、地域の木材をどのように使って依頼主の要望に応えていったのか紹介していただきました。ほぼ地元産材を使って建てられたキャンプ場の管理棟、暗く風通しが悪かった土蔵に増築して、新たに風と熱が循環する家…。これまで建築設計側から「こんな木が欲しい」という要望に、山側(供給側)が十分応えきれないことが多かったのですが、澤さんは逆に「山側の都合で使える建材が決まる」というスタイルで、様々な設計提案をしてきました。

 そんな澤さんが目指しているのは、「百姓力」を高めること。これは、資源に自らアクセスし、身の回りの暮らしを整える力や甲斐性を指します。これまで田んぼや畑で農作物を作ることはもちろん、増えすぎたササを利活用しようと、断熱材としての利用も試みる等、日々、試行を続けています。

 最後に澤さんから「小さな単位の循環が積み重なることで、やがて地球規模へつながっていきます。皆さんと一緒に考え、やっていきたいです。」と熱いメッセージをいただきました。

 話を聴いた後、参加者同士で感想の共有を行い、最後に参加者から出された質問に澤さんから答えていただきました。
ふりかえりと共有
※質疑の要旨は以下の通り。

Q1 人と人をつなぐコツは?
A1 人間力を高めることだと思う。常に心の扉を開いておくこと、相手に対する素直さ、思いやりも大切では。

Q2 こうした取り組みを業界のスタンダードにするにはどうしたらよいか?
A2 設計側も考えを変える必要があるのでは。地域から出る木材は4寸角で2mくらいの短い木材が多い。そのため、それに合わせた設計をどのように行うかがカギでは。

Q3 間伐材を利用した地域循環の仕組みは、はじめにどの程度思い描いていたのか?
A3 団体設立のきっかけとなった高山市が主催した勉強会には、地域通貨に興味を持っていた地元金融機関や、木材を運ぶ物流システムを担う高山市が参加しており、ある程度見えていた。ただ、最終的にはこのような絵(下図参照)を描くことで、関係者や支援者の共通認識を持つことができた。
澤さん循環モデル

質疑応答
 澤さんとのやり取りは終了後も続きました。参加者一人一人の胸に、澤さんのメッセージは届いたのではないでしょうか。

【参加者の声】(アンケートより一部抜粋)
・澤さんの言う「つなげるには人間力が必要」という言葉が響き、反省した。
・山や自然の都合から設計を考える精神に深く共感するとともに、実践の素晴らしさを感じました。伐採作業者がある程度生活の成り立つような状況になれば、より良い循環が実現できると感じましたし、そのためにできることを考え、実践していきたいと思いました。
・澤さんの取り組みが、自身の興味にかなり近く、参考になった。ササを取り入れた断熱材、自然エネルギーの利用、グランドデザインの考え方など。

報告者:大武圭介(ウォーリー)ホールアース自然学校

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