morinos連携講座『Basic Arborist Training-1』アーボリスト-1

開催した日:

 morinos連携講座『Basic Arborist Training-1(BAT-1)』、安全な樹上作業のためのアーボリスト・トレーニングを2日間にわたって開催しました。

 参加者は岐阜県、愛知県、三重県、長野県からの方々。メイン講師はATI(Arborist Training Institute:アーボリスト®トレーニング研究所)のトレーナーである近藤紳二さん、そしてアシスタントとして下西あづささん、加藤治久さんがサポートして下さいました。

 最初にアーボリストがどのように樹に上がるのか、下西さんのデモンストレーションを見ながら近藤さんが解説しました。

クライミング方法を見学する受講者

クライミング方法を見学する受講者

 「アーボリスト」は樹木の生育を促したり、樹勢回復させたり、枯枝剪定や整枝剪定をしたり、伐採したりできる技術者のことです。

 ATIは世界組織であるISA(International Society of Arboriculture)に日本で唯一認められた団体で、中部大学教授の John Gathright博士が所長を務める団体です。ちなみにISA とはアメリカに世界本部を置くアーボリストの世界組織です。

 講習ではまず各自が持参したツリークライミングⓇギアのインスペクションからです。ロープの違いでは16ストランド、24ストランド、32ストランド、48ストランドのうち、MRS(Moving Rope System)に適するロープはどれか、なども詳しく学びました。

ギアインスペクションする近藤トレーナー

ギアインスペクションする近藤トレーナー

 次にランヤードの仕立て方です。一般に購入するランヤードはパーツがバラバラなので、それをどのように組み立てるのか。最も重要なフリクション部分については、6コイル・プルージック、シュワビッシュ、ディステルの順にロープワークを学びました。

 ロープに対してプーリーを通して少し斜めから力を加えると、プルージックでは前後両方向に動かすたびにブレーキがかかりますが、シュワビッシュでは前に動かすのにスムーズで後ろにはブレーキがかかる。ディステルでは何度も前後するうちに緩む可能性がある。またプーリーを付ける向きを間違えるとフリクションが効かなくなる可能性が出ることなども学びました。

ランヤードの説明を聞く参加者

ランヤードの説明を聞く参加者

 その後、完成したランヤードをクライミングサドルに装着して、地上でランヤード操作を練習しました。

ランヤード操作を練習する参加者

ランヤード操作を練習する参加者

 午後からはロープをセッティングするためのスローラインとスローバッグについて説明を受けてから、スロー練習をしました。

 基本は「ダブル・ハンド・クレイドル・スロー」です。

スロー練習に励む参加者

スロー練習に励む参加者

 現場で装着するギアの説明を受けたのち、実際にロープセッティングです。どのように基本のMRS(Moving Rope System)をつくるのかについて近藤トレーナーが説明されました。

MRSシステムを説明する近藤トレーナー

MRSシステムを説明する近藤トレーナー

 続いて参加者自身でスローライン設定から、MRSのセッティング、疑似的なクライミング体験です。

 参加者は慣れない横文字、Throw、Head Ache、 Bark Check、 Bounds Check、 Climbing up、 Climbing down、 Open Rope、 Blakes などをコールしながらセッティングに励みました。

各自セッティングしたロープで疑似的クライミングする参加者

各自セッティングしたロープで疑似的クライミングする参加者

 夕方、17:00過ぎから室内での講義です。

 配布されたテキストを基に、カラビナについては、記された数値の意味について解説されました。ロープについてはロープを構成するストランドや、そのストランドの1本が切れたら廃棄とか、汚れたらどうするのかも説明されました。

 クライミング環境周辺のインスペクションでは、ブランチ・バークリッジや入皮、きのこについての見極め方法を説明されました。

 そして実際の作業計画では①ドロップゾーン、②ワークゾーン、③セイフティゾーンなどのゾーニングについて説明をされ、他にもコールとコールバック、フリクションセーバーなど様々な項目について説明されました。

夜の室内講義を受ける参加者

夜の室内講義を受ける参加者

 

 2日目です。

 アーボリストの安全のための意識として、Good⇒Better⇒Bestの考え方の必要性、クライミングの基本である「Low&Slow」の意味も思い出しながらの2日目です。

 朝一番で、フットループなどに利用されていたダブルフィッシャーマンズノットを作り、それの応用編を学びました。

ダブルフィッシャーマンズノットを作成する参加者

ダブルフィッシャーマンズノットを作成する参加者

 その後は、樹上でスタックしたスローバッグのトラブルシューティングです。

 まずはスローラインをつま弾くストラミング(Strumming)、次にフック&リフトです。どちらも実践しないと分からない技術です。

スローラインのトラブルシューティングを実践する参加者

スローラインのトラブルシューティングを実践する参加者

 近藤トレーナーから樹上の大枝上を移動する技術であるリムウォークを説明された後、参加者は地上でリムウォークの練習です。

 バディを組んだペアでクライミングとリムウォークの練習をしながら、どのようにポジショニングすべきかを学びました。

 他にも樹上でのロープアドバンスについて、どんな手順でロープを掛けて次に移って行くのかを学びました。

地上でリムウォークの練習をする参加者

地上でリムウォークの練習をする参加者

 MRS (Moving Rope System)はOpen Hitch Systemです。そこで近藤トレーナーが海外のアーボリストの多くが使っているディステルとフットアセンダーによるClosed Hitch Systemを紹介され、一人ずつチャレンジしました。

Closed Hitch Systemを説明する近藤トレーナー

Closed Hitch Systemを説明する近藤トレーナー

  使用するギア(Gear)の強度22KNは80kgの人が5m落下した時の衝撃荷重に相当。カラビナは樹上から道路などに一回落下させて傷が付いたり、金属疲労が入れば、即廃棄です。

 ロープとプーリー、ロープとカラビナの関係ではベンド・レイシオ(Bend Ratio:ロープの曲げ比)について触れられ、リダイレクトの際に使用するカラビナは2つで良いが、リギングなどでのベンド・レイシオは4倍であることも学びました。

クライミングの技術確認する参加者

クライミングの技術確認する参加者

 樹上のアンカーポイント、作業をする上でのリギングポイント、そのためのクライミングコース全体をどう見るのかを実際のコナラを前に学びます。ロープをかけるアンカーの枝の太さは、ISAでは3インチとなっていますが、これは樹種、病害虫の有無、角度によって違います。

 手ノコはどこに装着するか。ノコギリをどのように抜いて切断するのか。操作する際に、自分が使用しているクライミングロープやランヤードに注意すべきことは何か。

 近藤トレーナーはノコギリでの切り方について何種類か実践しながら説明して下さいました。

樹上でのノコギリの取り扱いや伐り方について実践する近藤トレーナー

樹上でのノコギリの取り扱いや切り方について実践する近藤トレーナー

 最後にノットの確認です。これまでエンドノットとしてのフィギュアーエイトノット、ダブルオーバーハンドノット、ダブルフィギュアーエイトやバタフライノット、シートベント、クイックヒッチを学びましたが、リギングで必要なカウヒッチ&ハーフヒッチ、ティンバーヒッチはまだ実践していませんでした。

 周辺が暗くなる中、カウヒッチやティンバーヒッチを実践しました。ティンバーヒッチでは5回以上、幹周の半分以上まで均等に巻くことも再確認しました。

ティンバーヒッチを実践する参加者

ティンバーヒッチを実践する参加者

 2日間のBAT-1講習でしたが、今後も毎日練習し技に磨きをかけることを誓いながら記念撮影です。

 「Tree!」の掛け声でポーズをとりました。

記念撮影風景

記念撮影

 1月31日からはBAT-2講習です。引き続きの人もいますが、楽しく学びましょう。

 以上報告は、JIRIこと川尻秀樹でした。

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