百年公園『里山林整備講座~刈払編~』
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百年公園事務所との連携講座として岐阜県百年公園で実施する『里山林整備講座』、今回は2回目です。面積約100haの公園管理に必要な刈払機の整備と安全な作業について学んでもらいました。
メイン講師は森林文化アカデミーでも非常勤講師をされている江崎尚史さんです。刈払機を使った作業をする機会が多い受講者に対して、刈払機の知識や安全な作業について、これまでの体験をまじえて説明をしていただきました。
最初に刈払機のハンドルの違いを説明、最も推奨されるUハンドル、林業の現場で見られるツーグリップ、そしてループハンドルです。最近のエンジンは25cc~30ccのものが多いですが、着目するのは機種の3軸合成値です。
この「3軸合成値」とは振動工具のすべての振動について、人体に影響を与える周波数帯域を抽出し、周波数ごとの補正を行って振動の強さとして表した振動値を、前後、左右、上下の3方向測定して合成した値であり、手や腕への振動の強さを表すものです。最近の機種の多くはこの数値が2.5~4.0m/S2になっています。
なお3軸合成値が10m/s2 より小さい場合は、1回の連続作業時間は10分以内、一日の作業時間は2時間以内とするのが一般的です。
飛散防止カバーの取り付け一や、地面に置いた時に刈刃が地面に触れないようにする効果があることを教えてもらいました。
エンジンを始動しアイドリングする際は、振動でタンク面などが擦り減るのでコンクリートやアスファルトの上を避け、スタータロープのほつれなどに注意することが重要です。切れそうになったスタータロープを短くして利用すると、エンジンに負担がかかるので、必ず新品と交換することをお勧めされました。
エアークリーナーをメンテナンスする時は、まずチョークを引いてからクリーナーを外して、フェルト素材の場合はパーツクリーナーで、スポンジの場合は中性洗剤で洗浄し、しっかり乾燥させてから戻します。
プッシュ式のプライマリーポンプの交換時には、3種類の大きさがあるので購入する時に間違えないように注意が必要です。
最近の刈刃は厚みが薄くなってきており、従来は2.25mmだったものが1.25mm程度に薄くなってきており、切れ味は良いがチップが飛びやすく、軽いためにキックバックによる事故も発生しているそうです。
ナイロンコードはいろいろな形状や、太さのものがあります。江崎さんは太さ2.4mmのアルエッジのツイストを使っているとのことでした。
刈払機のエンジンの回転数は6,000回転ほど(チェンソーは10,000回転)なので、混合油用のオイルは特に良質なものを選び、可能な限り50:1の比率で混合した燃料を使うことで、故障の原因を減らすようにされていました。
また江崎さん特注の回転ブレーキについても説明されました。回転ブレーキは少しの異変で動力が遮断されブレーキがかかるシステムで、現在市販されています。
使用する刈刃やコードによる小石の飛散について見ると、飛散が少ないのはチップソーで、笹刈刃は20mほど飛散し、ナイロンコードは20m以上飛散すそうです。
刈刃がチップソーである場合、目立てはダイヤモンドディスクを付けたグラインダーで実施します。
チップソーはチップの「背」と「アゴ」の両面をダイヤモンドディスクで目立てしますが、これが意外と難しい。下の写真ではまず「背」をグラインダー処理しています。
研修参加者の中には林業経験者もおり、積極的にグラインダーでの目立てを習って下さいました。
刈刃を取り外した時に、シャフトの内部につながる部分にグリスアップする必要があるかどうか点検することも話されました。
一通り説明を聞いた後は、各自持参した刈払機の整備です。エアークリーナーを初めてメンテナンス掃除する人もおり、チョークを引くのを忘れたり、刈刃脱着が逆ネジであることを忘れたりと、四苦八苦しながらメンテンスしていました。
刈払機には刈刃を装着してからガソリンを入れる。これは刈刃を取り付ける際に機械をひっくり返して行うため、先にガソリンを満たすとキャップからガソリンが漏れ出すことがあるからです。
参加者によっては目立てを再度確認し、研ぎ直していた方もいました。
またエンジン始動時には、右側に人がいないことを確認して実施することも大切です。これはエンジンがかかると同時に刈刃が障害物に当たるなどして右側に飛んでくる可能性があるからです。
エンジン部につながる部分にある2つのネジの緩みが無いか、給油タンクの下側のカバーはしっかりしているか、給油タンクの底がアスファルトなどですり減っていないかなど、様々なチェックポイントを再度解説されました。
さて、いよいよ現場です。
旧宮川家住宅主屋(旧徳山村民家)の裏山が今回の対象です。
2025年4月23日~6月15日まで、岐阜県で『第42回全国都市緑化ぎふフェア』が開催され、ここ百年公園も会場の1つとなります。
訪れた多く方に、岐阜県を代表する里山景観を見ていただこうと、里山生活で重要視されてきた樹種を残して、古い民家と調和した森林を整備することを目的に刈払いしました。
具体的にはクロモジ、コバノガマズミ、エゴノキ、コシアブラ、タカノツメ、ヤマコウバシなどを残し、ネザサを中心に刈りました。
受講者はこれまでに江崎さんから言われたことを頭に入れて、自分が担当する区画の刈払いを始めました。部分的には高さ1.2m程のネザサが生い茂り、さらにツル性の植物が絡まるなど、なかなかはかどらない箇所もありました。
最後に刈払い現場を見渡せる所に全員が集まり、実際面で安全のために何に注意すべきか、どんな動作が危険につながるのか、作業のための共通認識はどのようにシェアリングするのかなどの復習をしました。
江崎さんは、あちこちでエンジン音を響かせている受講者の作業の様子を観察して、個別にアドバイスをしておられました。
これで今回ご参加のみなさんは安全に刈払い作業できることでしょう。
そして4月までには、この旧宮川家住宅主家と里山林が一体化した里山風景になることを願っています。
以上報告はJIRIこと川尻秀樹でした。
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