ちょっと昔の山の暮らしに思いをはせて「ドウヌキ作り」【おとなと子どもの里山ナイフ教室】
開催した日:
10月のおとなと子どもの里山ナイフ教室は岐阜県関市の岐阜県百年公園で開催しました。
会場はダムに沈んだ村としても知られる旧徳山村から移築した古民家です。この建物が建てられたのは、だいたい150年ほど前になるのだそうです。今回は、そんな「ちょっと昔」の山の暮らしについて知ってもらうプログラムを企画してみました。
実は今回、プログラムを企画するにあたって、揖斐川町にある徳山民俗資料収蔵庫の見学に行ってきました。そこで見てきたのは、山の暮らしの中で使われてきた数々の民具。その中で目を引いたのがこちらの「ドウヌキ」と呼ばれる容器です。
大きさとしては、両手で抱えるバケツくらいのサイズです。当時はこれをお米を保管する「こめびつ」として使っていたそうです。材料に使われていたのはキリやサワグルミなどやのやわらかい材質の木。その幹の部分の芯をくり抜いて(胴を抜いて)、底板を嵌めて容器にしたものです。
実は百年公園の古民家の裏には大きなキリが1本立っています。ドウヌキに使うキリの大きさとちょうど同じくらいなので、もし機会があれば1度見に行って頂くと実物のイメージがしやすいと思います。この日のプログラムではキリの木を見てもらった後に、ドウヌキをモチーフにしたペン立てと小さなトレー作りにチャレンジしてもらいました。
今回のナイフワークは材料を好みの長さに切り分け、木の幹の「芯」を抜くところからスタートです。今回は予め百年公園内で伐採しておいたコシアブラに、事前に穴あけをしておいたものを材料に使いました。当初は実際のドウヌキと同じキリの材を探していたのですが、なかなか条件に合う素材が見つからず今回はコシアブラの木で代用することにしました。このコシアブラも百年公園内で見られる樹種の中ではやわらかい方に入る樹種です。
当初はこの芯のくり抜き作業が大変かな、とも思っていたのですが、幼児、小学生の子どもたちも上手にナイフと木を持つ手の動きを組み合わせて芯の穴を広げることができていました。この作業は普段の木の外側(樹皮の面)を削るナイフワークと異なり、木の繊維を横から剥くように削るので、力があまり無くてもやりやすかったようです。
大人の方はよりこだわって、薄く薄く削ってみたり、カドの面取りをこだわってみたり。ドウヌキはシンプルな作りですが、それぞれに思う「好みのドウヌキ」を作ることに皆さんはまってしまったようで、お昼休みも返上でドウヌキ作りにのめり込む姿も見られました。
午後の初めは「別の作品も作りたい。動物を作りたい!」という子ども達の要望に応えて、森に入ってタカノツメの枝をとってきました。
午後はゆっくり、それぞれの作品作りの時間を過ごしました。
参加者の皆さんは前々から作ってみたいと思っていたカスタネットを作ってみたり、動物を作って好きな色を塗って仕上げたり。手が疲れてきたら、お菓子をつまんでコーヒーを飲んだり・・・。
午前中に引き続きドウヌキを作ったり、マイペースにクラフトを楽しみながら、わからないことはスタッフに聞いてもらったりして、ゆったりとした、おとなと子どもの里山ナイフ教室らしい時間の過ごし方をしました。
今回は秋の涼しさも進み、庭の落葉を眺めながらのナイフ教室となりました。
良い気候の中、古民家の中はとても居心地がよく、参加された皆さんに終日のプログラムを飽きることなく楽しんで頂くことができました。
11月、12月のナイフ教室は同じくここの古民家で、都市緑化フェアとの連携企画として実施を予定しています。少し寒くなる時期に入りますので、今度は囲炉裏で火を焚きながら、もの作りを楽しんでもらえるプログラムを考えています。そちらもどうぞお楽しみに。
森林文化アカデミー
木工専攻准教授 前野 健
休館日:火・水曜、年末年始(休館日が祝日の場合、翌平日が休館日になります)
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