教員主催プログラム「心地よくエコに暮らす講座(冬編)」を実施しました

開催した日:

森林文化アカデミーのユニークな講師陣によるスペシャルプログラム。今回は木造建築専攻の辻充孝先生をゲストに迎え、自身の自宅改修を例に、心地よくエコに暮らすための知恵やノウハウを教えていただきました。岐阜県内外から10名が参加しました。

冒頭、参加者から自己紹介と参加動機を話してもらいました。
簡単にどうぞ、と言ったのですが、皆さんリフォームやエコな生活に対する興味関心が非常に高く、たくさんの想いを語っていいただき、10人の自己紹介が終わるまで20分近くかかりました。
心地よくエコに暮らす講座(冬編)

続いて辻先生から40分ほど、今回のテーマである「心地よくエコに暮らす(冬編)」について、プレゼンテーションしていただきました。
最初に日本のエネルギー自給率や一次エネルギー消費の目安について、クイズを交えて紹介がありました。食糧自給率(37%)、木材自給率(42%)と比べて、エネルギー自給率はわずか11%と低く、エネルギーがないと食糧自給もままならず、日本のエネルギー自給率の低さは安全保障に大きく関わる課題です。

また、過去50年間で産業部門のエネルギー消費量は0.8倍と省エネが進んでいる一方、家庭部門は1.9倍に増加しており、家庭部門での省エネはまだまだ必要とのこと。
では、家庭のどの分野でエネルギー消費量が多いのでしょうか。
感覚として、暖房・冷房費が一番エネルギー消費が多いように感じていたのですが、実は給湯が最も多く、次いで家電、3番目に暖房となっています。辻先生曰く、給湯は水を温めるため、一番エネルギーを使うとのこと。(水は空気と違って温まりにくいため)

また、こうした給湯や暖房に使うエネルギーは、電気・ガス・灯油などが一般的ですが、これからの燃料コストは近年、上昇し続けています。
では、心地よくエコに暮らすためのポイントはどんなところにあるのでしょうか。
後半は、辻先生の自宅改修を例に、具体的なポイントを解説していただきました。

関市内にある辻先生の自宅「カミノハウス」は、築100年以上の平屋建ての古民家です。
外観のイメージを残しつつ、床や壁に断熱材を入れ、薪ストーブや太陽熱温水器、省エネ家電の導入などに取り組んだことで、エネルギー消費量が標準的な世帯に比べて78%削減できているとのこと。

具体的な冬の省エネ例として、
・網戸を外し、窓を拭くことで日射(太陽エネルギー)を取得する。
・薪ストーブを設置し、その上で調理することで、暖房エネルギーと調理でのガス消費を削減。
・真空管式太陽熱温水器を設置することで、給湯エネルギーを削減。(夏季は給湯器はほぼ不要)
・照明を高効率LEDに替え、ソーラー発電と蓄電池の設置で、冷蔵庫をオフグリッド。
など、どれも具体的かつ説得力のある省エネ対策でした。

辻先生曰く、健康で心地よい省エネ住宅の肝は、自身の暮らしにあった設計が大切で、そのうえで基本性能、特に断熱性能を強化することがポイントだそうです。また、省エネ設備は故障した時の取り換えを考えて、後付け対応できるものが良いとのこと。
そして何より、楽しく暮らせるしかけと、省エネ性能の見える化(環境家計簿で標準家庭に比べてどれくらい削減できたか)も大切だと話を締めくくりました。

プレゼンテーションの後、実際の温熱環境を計測できるサーモグラフィーや日射計を使って、室内のどんなところから熱が逃げているか、日射のエネルギーがガラスを通すことでどれくらい遮られるか、といった目に見えない点を可視化する体験をしました。窓や床のわずかな隙間から熱が逃げていることが分かり、皆さん驚いていました。

サーモグラフィー

サーモグラフィーで熱が逃げている場所を可視化しました

日射計

日射計を使ってガラスで太陽からの日射がどれくらい遮られるか計測しました。

最後に、辻先生が設計・施工に関わったmorinos建物を案内していただき、実際に薪ストーブの輻射熱の性質について解説していただき、さらに納得していました。
毎日暮らす家で、心地よくエコに過ごすためのヒントがいっぱい詰まった、あっという間の2時間でした。
morinos建物の解説

 

【参加者の声】※アンケートより抜粋

・「日本のエネルギー消費量」や「一次エネルギー消費量目安」など具体的な割合で可視化されると、どこを重点的に取り組むと効果的かが見えていきますね。自分の漠然とした感覚とのズレに驚きです…。給湯>暖房>冷房…なんですね。
・辻先生の実際の暮らしの実践例を元にお話しいただけて、より説得力も増してよかったです。
・大切なのは知識よりも自分、そして人の暮らしに対する姿勢だと思います。辻先生や参加者の皆さんからヒントを頂けた気がします。

報告者:大武圭介(ウォーリー)NPO法人ホールアース自然学校

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