里山林整備研修 ~子どもの遊べる森の整備方法を学ぶ~
開催した日:
『里山林整備研修 ~子どもの遊べる森の整備方法を学ぶ~』
関市の田原保育園にお願いして開催した研修に、関市の公立保育園の方々15名、そして県内の保育士さんや木育を目指す方など9名の合計24名の方々が参加されました。
午前中は室内での基礎講座。植物が「競争しているのではなく共生している」ことを学んでもらうことから始まり、樹木が発生した歴史、組織上の違い、そして里山林整備の目標や目的の決め方など、里山林整備する上での根拠を学んでもらいました。
JIRIからの講義が終了したら、普段から山で活動している田原保育園の園児のみなさんが「ローストビーフ」、「にぎり寿司」に例えた山のお宝について話を聞きました。
大人の目線だけで里山林整備するのではなく、多様な子どもの目線で森のお宝を探すことも再確認しました。
田原保育園の子どもたちの山での様子を説明する保育士の先生
午後からはヘルメットと手鋸を装備して、いざ山へ!
田原保育園の園児さんたちがいつも辿る山道を登って、本日の現場に向かいました。園児のみなさんはこの急な斜面を駆け登って行くそうですが、ヒノキやツブラジイ、コナラの生えた森の歩道は、昨日の雨で滑る少し危険な状態でした。
目指して登ってきた山頂は田原保育園のみなさんがいつも活動されている場所の1つです。ここは林業の専門家にも依頼して、すでに風倒木などを伐採整理されていました。
ここでは生えているタカノツメやコシアブラ、ソヨゴ、アラカシ、ツブラジイ、コナラなどの見分け方、樹種特性、萌芽性の有無、実生発生の可能性などを学んでもらいました。持続可能なフィールド利用上、重要なポイントです。
樹種の見分けができなければ里山林整備はできません。現場に生えていたコシアブラも単に新芽を山菜にするだけではなく、4月~6月ごろは小枝で「刀」や「菜箸」が作れることや、幹についた枝が脆いこと。林地が攪乱されて光がよく当たる裸地のような場所は更新しやすいことなどを学んでもらいました。
実際の作業は、①放置林状態の森でどの樹種を切るのか? ②切り方はどうするのか? ③切った枝はどう処理するのか? などを様々話した後に、5グループに分かれて手鋸主体で作業しました。
ここは子どもたちが安全に遊べ、保育士の先生が子どもたちの安全確認をし易くするのが目的で整備します。そのため伐採は最も多く生えていて、視界を遮りやすく、林内への光の侵入を阻害しているサカキに決め、周辺のサカキだけを選択的に伐採することにしました。
途中で作業を止めてもらい、全員で1回目の考察タイムです。
林地を歩くことを考えれば、切り株は極力地面に近い場所で切るのが理想的ですが、切り株を杭の代用にするなら、ある程度高く切る必要があります。
また林内を見通し良く、明るくする方法は伐採だけではありません。上空で水平方向に大きく広がる枝葉を付けた枝を、幹から切り落とすだけでも相当明るくできます。
枝は最初に幹から少し出たところで切り、2回目に残った枝を幹に傷つけないように再び切り落とすことも学んでもらいました。
枝の切り方を説明するJIRI
ソヨゴの枝を切った痕です。
幹から出っ張っているように見えますが、これが適切な剪定ラインで切った枝痕です。
2回に分けて切り直された枝痕
根元から切る場合は、一方向からのみ切るのではなく、木材の圧縮側と引っ張り側を考えて、最初に圧縮される側に切れ目を入れて、次に引っ張り側から切り進むことも学んでもらいました。
約1時間ほど作業してから、2回目の考察タイムです。サカキを中心に伐採を進め、一部はソヨゴの枝を切るなどしたので、最初と比べてどれほど風景が変わったのかを再確認してもらいました。
写真の下側には、以前から園児さんが遊んでいる場所が見えるようになりましたが、まだ見通しが利くわけではありません。どの幹を切り、どの枝を切るのかを全員で確認してから、再度作業してもらいました。
作業は少し切っては遠景で確認し、少し切っては確認しを繰り返して、切り過ぎないように考慮してもらいました。
最終的に田原保育園の園長先生も満足のいくレベルまで到達することができたようです。
明日は年長さんがこの現場に来てくれるとのこと。その園児のみなさんがどんな反応を見せてくれるか楽しみです。
最後に全員で5グループの作業ポイントの目的やどんな作業内容だったのかをシェアリングして、1日の研修を終えたのです。
今回初めての「子どもの遊べる森の整備方法を学ぶ」研修でしたが、目的や目標を設定してから整備することが重要であること、また再生可能な里山林整備には萌芽性・発芽性を理解して作業することが重要であることなど、大変盛りだくさんな内容になってしまいました。みなさんご苦労様でした。
以上報告、ジリこと川尻秀樹でした。
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