2022年『百年公園里山林整備講座』第1回目
開催した日:
百年公園事務所と岐阜県立森林文化アカデミー morinos連携による「百年公園里山林整備講座」の第1回目を開催しました。
本日は午前中は「里山林整備の基礎知識」についての講義、午後から樹木判別と現地下見を兼ねた小実習です。
里山林整備ですが講義の始まりは、1992年にアメリカ合衆国オレゴン州で発見された世界最大の生物、オニナラタケについての話。開発されていない天然林で発見されたこのオニナラタケの菌糸総面積は8.9平方キロメートルの広がりを有しています。
こうした菌類の一部は樹木を枯らす大敵と考えられていますが、森林で大きな役割を果たしていることも事実です。
アメリカでの一斉造林地におけるバークビートル被害や大規模な山火事の事例など、単一樹種だけによる多様性を欠く林業の弊害についても説明しました。
また針葉樹と広葉樹の違いについて、進化の歴史、分類の違い、構造上の違い、木材組織の違いなどについても説明しました。
続いて、「里山とは」について林学や里山学の先生たちの考え方を紹介しました。
そして、「里地、野良、野辺、里山、奥山、岳(嶽)」についての説明と、生態系サービスについての説明。樹木の更新(切株更新や種子散布)について、またマツノザイセンチュウ病やカシノナカキクイムシによるナラ枯れについても説明しました。
午後からの実習に先立って、図鑑についても説明。林将之さんの図鑑の特徴、図鑑の見方についても説明しました。
午後からは2年前に作業をした徳山古民家裏の現場を確認し、その次に今年度の現場に行く道すがら樹木同定の実習です。
ここではモチツツジとヤマツツジの同定をしながら、どのようなポイントで図鑑を見たら良いのかを学んでもらいました。
ツツジに続いて、ヤマウルシとヤマハゼの見分け方です。
図鑑で「奇数羽状複葉」を見ることだけでなく、どの状態で「1枚の葉」なのか、単葉の形は、表面の毛の多さは、裏面の側脈の具合はどうか。様々な見分けポイントを学んでもらいました。
今年度の整備対象地は、昨年度に横井先生の最終講義で課題となった場所です。
百年公園事務所から、「今年の整備予定地は横井先生から森林のリセットも含めて検討しては?と言われた場所でお願いします」との依頼を受けて、その現場に行きました。
参加者に「講義では整備する目的と目標が重要と言いましたが、どう考えたらわからないならば、まず伐採しても良いと思う樹種を、みんなで考えましょう」と声掛けしました。
その結果、①アカメガシワ、②ヤマウルシ、③ヤマハゼは伐採しても問題ない。との合意に至ったので、まずは上記の3樹種を伐採してみて全員で現場確認しました。その結果、④アラカシ、⑤イヌツゲ、⑥ツブラジイも伐採樹種に追加して再度作業をすることになり、かつこの現場は「クリを主体としたクリやコナラによる落葉広葉樹林に仕立てる方向」が決まりました。
全員で作業する目的、目標が決まれば、作業は簡単です。
アカメガシワやアラカシなどを手鋸で切っては、等高線上に並べて行きました。僅か30分ほど作業しただけですが、現場はみるみる気持ち良くなっていきました。
下の写真では確認しづらいですが、ホオノキ周辺も相当明るくなり、クリの木だけでなく、最初は確認しづらかった高さ20cm以下のコナラ稚樹もたくさん見られるようになりました。この百年公園の敷地にはサルやイノシシはいませんが、クリやコナラの堅果が多くの野生動物を養ってくれることを期待します。
さて、百年公園での里山林整備講座、すでに募集は終了して参加者は決定していますが、次回は6月19日に「チェンソー整備講習(特別教育受講者限定)、7月3日には「現地での整備作業体験」を予定しています。
次回の報告、ご期待ください。
以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。
休館日:火・水曜、年末年始(休館日が祝日の場合、翌平日が休館日になります)
Phone : +81-(0)575-35-3883 / Fax:+81-(0)575-35-2529