『morinosカフェ番外編-軽井沢風越学園大解剖!? あらたな学び場づくりの挑戦』オンライン実施しました
開催した日:
いろいろな人と交ざる場所、morinos(モリノス)。
2月のmorinosカフェは、「軽井沢風越学園大解剖!? あらたな学び場づくりの挑戦」と題し、長野県軽井沢町に2020年4月に開校したばかりの、軽井沢風越学園(かるいざわかざこしがくえん・以下、風越)スタッフの奥野千夏(ちか)さん(写真左)と曳田裕子(ひっきー)さん(写真右)をゲストに迎えて実施しました。
新型コロナウイルス感染拡大防止の緊急事態宣言が出されていたため、2/7(日)の午前中、完全オンラインで実施しました。当日は50名以上のオンライン参加者があり、女性が約6割、教育関係者が多かったです。オンライン実施となって、岐阜県外からや、morinosのプログラムに初めて参加した方も過半数となるなど、これまでにない反響でした。また、様子を記録したFacebook上の動画は2,000回を超える再生があるなど、終わった後も大きな反響がありました。
前半はゲストより、「風越基本情報」として、学校の概要紹介がありました。
以下のスライドはその一部です。私立の小中一貫校で幼稚園もある日本で唯一の幼少中混在校です。
少人数教育で学費も高そうというイメージですが、実際は73万円(年額・小中学校)と私立小学校の全国平均の学費・150万円/年に比べると安いと言えるかもしれません。
風越の特徴は、幼少中が混在しているだけでなく、異年齢のホームと呼ばれるグループが構成されているということ。
また、教員は「先生」とは呼ばずに、すべてニックネームで呼んでいるとのこと。こうすることで、スタッフ間だけでなく、子ども達と大人の関係性も上下でなく、ある意味対等に風越を共に創るメンバーという意識が醸成されるようです。
(奥野さんは「ちか」、曳田さんは「ひっきー」と呼ばれています)
スタッフの校務分掌は流動的ではっきりしておらず、その都度、関係者でミーティングしているとのこと。
この図も、あくまでその時点でのイメージを可視化したもの。
普通の学校の職員室に当たる場所。フリーアドレスで座席は決まっておらず、オープンな雰囲気です。
校舎の中心にはライブラリーと呼ばれる図書スペースがあり、とても開放的です。
1-2年生のカリキュラム。午前中に「土台の学び」と呼ばれる、「読む・書く・計算する」といった基礎的な学びの時間や、「セルフビルド」と呼ばれる、個々の興味関心に沿った学びの時間があります。
後半は、風越で起こっている様々な出来事を紹介してもらいました。
1-2年生の土台の学びでの「つくる・えがく」の時間に製作したもの。箱を使って何かを作ろうということで、写真の子が作ったのは「酔っぱらいの手土産」。実際に酔っぱらいを見たのではなく、漫画で見たイメージで作ったそうで、1・2年生の頃は空想の世界と現実世界を行ったり来たりしているとのこと。
こちらはカリキュラムの検討しているスタッフに交じって、6-7年生が「自分たちは風越で学べている実感がない」と意見を言っている様子。風越では、子どもたちも作り手として参加しているのが大きな特徴です。
後期(小3-中1)の子どももモノづくりが大好き。この鎧は子ども自ら作ったもので、木刀も多数作っていたそう。
ところが、小3-4年生のプロジェクトで「小さな国づくり」の中でいろいろ事件が起こり、そのうちに「銃刀法」が作られました。そのためこの写真では、木刀が違反になるということで、斧に持ち替えています。この後、地域通貨が発行され、それを保管する「信用金庫」を、山一證券の本を読んだ子どもが作るなど、活動はどんどん広がっていきました。
一通り風越の取り組み紹介が終わった後、参加者とゲストを交えて3-4人のグループで感想の共有を行いました。
その後、ホストのナバさんよりコメントと質問がありました。
(ナバより)
・morinosと似ているなぁ。みんなで一緒に作っている、形がない、変化していこうなど。
・形や枠がないことの重要性を改めて感じた。
・学習指導要領に則っているところが面白いし、重要だよね。
・スタッフ、保護者、子ども達みんなが迷いながらやっていることが面白い。10年後、形が出来上がっているとつまらないのでは。
・公立の学校に通っている大多数の子ども達はどうなんだろう?風越のようなアプローチはできるのだろうか。
・風越の子ども達がどうなってほしいのか、スタッフ同士の対話をどう設け、どのように作っていっているのか知りたい。
・morinosでも公立保育園、小学校などとの連携は取り組んでおり、morinosとの間にそれほど大きな障壁はないのではと感じている。
(ちか・ひっきーより)
・風越は元々風越だけで完結するのではなく、公立学校にどうアプローチするか考えている。実際、連携で公立学校の先生を風越に派遣してもらっている。
・公立学校にいた時は窮屈さを感じていたが、風越の自由度の高さに戸惑うこともあり、逆に公立学校の素晴らしさに気づいたこともある。今、公立に戻ったら自分のクラスをもっともっと自由にできるのではないかと思う。自分の中にある「こうでなければならぬ」という枠組みを壊せば、もうちょっとやれることがあると思える。
・公立の先生たちとオンラインで話をして、公立でも素晴らしい実践をされている先生はたくさんいる。軽井沢町の公立学校の先生と子ども達との交流を深めることで、新しい学びを広げていきたい。
・風越では、「つくる」を大切にしている。これを共通認識にして毎日過ごしている。最終的には「自分の人生をつくる」を目標にしている。理事長(本城さん)と話しをしていて、卒業生がホームページで「自分は風越学園で学んでこういう生き方を選んだ」と発信できると面白いよね、と。高校進学は1つの選択肢でしかないだろう。スタッフも視野を広げて子どもと関わっていかなければいけないと思う。
・多様な選択肢を自分で選んで、決めて、生きていく子ども達になってほしい。
・前期(幼~小2)は「自分をつくる」、後期(小3~中1)は「自分でつくる」を大事にしている。
・7年生(中学1年)の子と話をしていて、進路についての相談を受けた。同時期にスタッフ側でもキャリア教育について議論していたので、こうした共時性は面白いと思ったし、子どもってすごいと思った。
(スタッフ間のコミュニケーションはどうやっているの?)
・子どものことは常に関心を向け、スタッフ同士で話している。みんなでみんなを気にしているのは、公立と変わらないと思う。ただ、公立よりも子どもの数が少ないこと、クラス担任制ではないため、複数スタッフで考えられることが特徴。
・公式WEBサイトで公開している「かぜのーと」では、スタッフの想い(悩み・葛藤含め)を赤裸々に綴っている。保護者にも一緒に作ろうと呼びかけている。保護者説明会でも、そのことは強調して伝えている(上図)。
(これからの風越・morinos、そして教育とは?)
【ナバ】風越もmorinosも永遠に出来上がらないといいと思っている。形あるものに囚われず、今あるもの、目の前にいる人にどう関わるか。
【ちか】教育もたぶんそうですよね。永遠に出来上がらない。
【ひっきー】今は混沌としていることを楽しめればいいと思っているが、前は「あれも、これもやりたい」と苦しかった時もあった。1つの枠にとらわれていると苦しかったが、それを外してみると楽に思えるようになった。
【ナバ】どうしても「共通目標」とか枠組みや形を作りたがるからね。安心するし。風越学園は子どもを育てているのではなくて、大人(スタッフ・保護者)を育てているんだろうね。このプロセスをしっかり記録して残すことはとても大切だと思う。
最後に画面越しに記念撮影をしました。
今回をスタートとして、今後も風越学園との交流を続けていきます!
【ゲストからのメッセージ】
〇奥野千夏(ちか)さんより
今回、企画をいただいた時にはmorinosへ私たちがおじゃまして、参加者の方々と対話ややりとりをしながら一緒に考える会にしたいと思っていました。(もともと一方的に話すのが苦手というのもありますが…)
オンライン開催で相互のやりとりがうまくできなかったのがもどかしかったですが、オンラインだからこそ ライブ中継を含めてたくさんの方々が参加してくださったのは本当にうれしかったです。今日をはじまりに、ぜひこれからの遊びや学び、みんなでつくるということについていろんな方々と一緒に考えていく機会をまたつくりたいです。ありがとうございました。
〇曳田裕子(ひっきー)さんより
たくさんの方に参加、視聴していただき、とても嬉しかったです!開校したばかりで私たちスタッフも子どもも保護者も、迷いの中にいます。そして、これからもずっと迷いながら、「よりよい」を目指してつくり続けていくのだと思います。
参加者の皆さん、morinosのお二人とのやりとりの中で、新しいことに挑戦しようとしていても、気がつくと自分の経験や、安心する「枠」にとらわれてしまうものだ、ということに改めて気付くことができました。
今、風越学園で思いっきり実践することとともに、未来の教育についても考えていきたいと思いました。
素晴らしい機会をありがとうございました!
【ホスト(morinos)を代表して】
〇萩原ナバより
短い時間でしたが、風越学園の魂に触れることができたことがとても嬉しかったです。つくりはじめた新しい空間を互いに対話を重ねながらいいものにしていこうとする姿、今までの固定観念を捨てて、もう一度目の前に起きていることをしっかりと自分たちの目で体で感じて反応していこうとしている姿、そしてそれを実現させるために様々なものに戦い続けている姿が印象的であり、そしてmorinosと重なる部分があるような気がしてとても親近感を覚えました。これからの社会のあり方のモデルがここにあるように思いました。いつか、必ずや直接この目で見に行きますね。
【参加者の声】(アンケートより)
・地方からなかなか行けないので、オンラインであちこちの取り組みがみれるのは嬉しい限りです。スタッフも保護者も子どもも悩みながら共に作っていく、というのが素敵やなぁと思いました。
・風越学園は「自由な学校」ではなく「自由になるための力をつける学校」という言葉が印象に残りました。自由になるための力をつけるために、スタッフ、子どもたちも一緒になって学びながら、考えながら、変わり続けることを自然なこととして受け入れていてすごいと思いました。
・枠が無い、カタチのない場所、という言葉が印象的であった。これはmorinosでナバさんがお話ししていた「ここは永遠に未完成の場所」という言葉とも共通していて、自身の取組でも大切にしたいキーワードとなると感じた。
※参考資料:時間内で答えられなかった質問への回答はこちらをご覧ください。
報告者:大武圭介(ウォーリー) NPO法人ホールアース研究所
休館日:火・水曜、年末年始(休館日が祝日の場合、翌平日が休館日になります)
Phone : +81-(0)575-35-3883 / Fax:+81-(0)575-35-2529