百年公園で『里山林整備』講座
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関市にある岐阜県百年公園、そこでmorinos連携企画『里山林整備 ~ 林内景観の改善 ~』を開催しました。今回は限定10名で、講義と実習の二本立てです。
本日のスケジュールは講義として①里山林の現状把握、②里山林整備の考え方を学び、午後からフィールドで、「林内景観の改善」のために、①現況把握、②整備方針の選択、③整備作業、④振り返りです。
里山とは、1995年に四手井先生は「奥山に対して、農用林と呼ばれていた林業上の林や、農家周辺の林」と言われ、2003年に田端先生は「繰り返し利用されてきた薪炭林やマツタケ山からなる林業的自然、それに隣接する田んぼ、田んぼの畦、ため池、ため池の土手、用水路からなる農業的自然が結合した自然」と言っている。
里山は多くのレッドデータ生物の宝庫でもあります。但し、同じ里山でも美濃と飛騨では里山林が放置されても、その意味合いは大きく違います。飛騨であれば放置された里山は、家具材生産利用林に転換できる可能性がある。
里山林の意義や価値は概ね4つに分けられ、①環境保全的な価値、②生物保全的な価値、③保健文化的な価値、④物質利用的な価値がある。
①環境保全的価値には、根系による斜面支持(土壌緊縛)、高浸透能(水土保全)などがあり、これには大径木が存在し、下層植生が存在し、落葉が豊富で多様であることが整備目標となる。
②生物保全的な価値では、階層構造が発達し、多様種が混在し、枯れ立木や倒木があり、目的の動植物が育ちやすいといったことが整備目標となる。
③保健文化的価値では、景観に配慮した樹種構成、見苦しいものが無い、立木密度が適正、歩道が整備、歴史的な利用が継続されることが整備目標となる。
④物質利用的な価値には、利用できる植物が生育、樹木が利用できる、動物がすみやすい環境、人が利用の仕方を知っている、利用するための仕組みができていることが整備目標となる。
森林整備にあたっては「必要性」が重要であり、①目的・②目標・③方法をしっかり定めること。決して整備することが目的ではない。
最終的に「どのような林にしたい」のか?
里山林整備の方法は「足し算(植える)」か「引き算(刈る・伐る)」か、作業の多くは「引き算」です。その方法は、〇生物学的に理にかなっていること。〇目的を達成できる方法であること。〇法的・社会通念上、可能な方法であること。〇自分たちの実力で実行可能なこと。〇複数の方法を比較すること。が重要。
里山林整備は「art」である。例えば造林を意味するSilvicultureは「Art and Science」と表現される。つまりArtとは技術・技巧を意味します。生き物を科学的技術で管理する。
午後からは百年公園で実習です。青空に映える美しい紅葉が見られました。今日は公園を訪れている人たちも多くいました。
百年公園に移築されている徳山村古民家が現在、補修工事件中でしたが、その裏山を里山林整備することにしました。保健文化的価値ですので、景観に配慮した樹種構成を目指した整備をするため、様々な方向から山全体を眺めます。
この里山は(1)関市の里山をイメージすべきか。(2)旧徳山村をイメージすべきか。によって、残すべき樹種も異なります。ちなみに現在の裏山には、ヤマザクラやエゴノキ、アベマキ、ソヨゴ、ヒサカキ、アオキ、ネムノキ、ヤマハゼ、コバノガマズミ、ムラサキシキブ、スギ、キリ、ネザサなどがありました。
作業は何段階かに分けて実施します。一度に大量作業するのではなく、まずはネザサの刈り取りから始めました。
ネザサやササクサ、つる植物を剪定鋏で刈り取るだけでも結構な作業で、これほど簡単な作業なのに見た目はずいぶん変わります。
ネザサを刈った感想として、「里山のすそ野はきれいに管理されていた方が気持ちい」と発言された参加者もいました。ネザサは鎌や鉈で切ると、切り口が鋭利になって危険なため、剪定鋏で丁寧に切りました。
ネザサの次は、ヤマハゼやアオキ、ソヨゴなどを順次伐採しました。ここで重要なのが、少しずつ伐り進めることです。何度も全員で見直しながら作業していきます。
途中、横井先生が斜立したソヨゴとフジヅルに巻かれた枯れ枝について、伐ったり、外したりすると、見栄えが相当変わることを説明し、その言葉にあわせて作業を進めました。
さて、今回は百年公園さんとの初めての連携企画『里山林整備』でしたが、本来の里山林整備講座は何回も連続講座で実施すべき項目です。徳山村古民家が再生される5年後には、美しい里山の森林風景がご覧いただけること願っています。
以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。
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