全盲の広瀬浩二郎先生に学ぶ
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本日はmorinos休館日です。
そこで国立民族学博物館のグローバル現象研究部の准教授、広瀬浩二郎先生(日本宗教史・触文化論)をお迎えし、視覚特別支援校や盲学校、そしてすべての人に楽しんでもらえるために「何をすべきか」、「何ができるか」の勉強会をしました。
最初に、広瀬浩二郎先生は大阪の国立民族学博物館に勤務され、「触文化」(さわって知る物のおもしろさ)を伝える目的で、各地で「さわる」体験型ワークショップを実施されています。またユニバーサル・ミュージアムを考える中で、博物館来館者に「触学・触楽・触愕」の機会を提供できるように努力されています。
さて、広瀬先生に、公共施設ならどこにでも設置されている『点字ブロック』について、必要性の有無も含めてお尋ねしました。
まず、点字ブロックは正式には「視覚障害者誘導用ブロック」と言います。1965年(昭和40年)に三宅精一氏によって考案され、1967年3月に岡山県立岡山盲学校近くの国道250号、原尾島交差点(現:岡山県岡山市中区)に世界で初めて敷設されました。
点字ブロックには「誘導ブロック」と「警告ブロック」の2種類があり、「誘導ブロック」は進行方向を示すブロックで、線が並んだ形状なため「線状ブロック」とも呼ばれます。また「警告ブロック」は、危険箇所や誘導対象施設等の位置を示すブロックで、点が並んでいる形状なため「点状ブロック」とも呼ばれます。
そこでmorinosですが、砕石エリアから突然、フローリング部分に3mほど設置されているだけなので、そのこと自体も問題だし、それ以前の対策が無いことも問題だと感じたのです。
ところで、今回、広瀬先生にお越しいただく前に、NHKのEテレで感動する番組を見た私は、みなさんに少し伝えたいことがあります。
ETV特集「心が躍る生物教室」が7月25日(土)と7月30日(木)に放送されました。これは日本で唯一の国立盲学校、筑波大学付属視覚特別支援校の武井洋子先生による授業の様子が放映され、その番組に卒業生でもある広瀬先生が出演されていました。
番組は武井洋子先生が指導する中1理科(生物範囲)の授業で、1年間掛けて植物の葉や、動物の骨格標本を五感を活用して観察し、気づいたことを言葉にするものです。生徒自身が発見した喜びと、他者に情報を伝え、共有するための言葉は、事物をじっくり観察し、対話によって言語化することを繰り返しているうちに次第に洗練され、他の人にも通じる表現となるというものです。
この内容については一部が、ハートネットTV「心が踊る生物教室」の3分間のダイジェスト版(字幕は英語版)はしばらくの間、配信中です。 https://youtu.be/LMwkHEP25hc
広瀬先生は盲目の方とは思えないほどアクティヴで、伐採されたスラッシュマツの切り株を触って触覚、次いで切り株の臭いを嗅いで嗅覚、叩いてみて聴覚を駆使しして全身で切り核を体感されていました。
クサギの花のユリの花のような香り、そしてクサギの名の由来にもなった葉や茎の臭いにおいを嗅ぎ、山の急斜面も登る。
ナバさんが「これから登る道は、①もっとも緩い歩道ルート、②急坂の直登ルート、③イノシシが利用していた獣道ルート、のどれで登りますか?」と、広瀬先生に尋ねると、「イノシシの獣道ルート」と即答され、即チャレンジ!
しかし恐るべしは、広瀬先生。道なき道の山の斜面を、見えないのにスイスイと登って行かれる。足の裏感覚が私たちよりも優れておられるので、斜面を滑ることもなく、スムーズに登れるようです。
自力建設、「四寸傘」に到着。
私は失礼ながら、全盲の方をこの山にまでご案内できるとは考えておらず、ここまでお越しいただけただけでも、しかも獣道を登って頂けたこと、上る途中でいろいろ教えて頂けたことに感動しっぱなしでした。
「四寸傘」では、ナバさんの提案で広瀬先生も裸足なって、森を足の裏で感じてもらいました。
裸足で落葉広葉樹の葉と小石の道、スラッシュマツの落葉と小石の道、植生によって足の裏感覚も森の臭いも変わります。
裸足でスラッシュマツやコナラの幹に乗りましたが、どうもコナラの幹(樹皮)の足の裏感覚が良いみたいでした。
さて、広瀬先生にはキマワリやハエトリグモの仲間、カナヘビなどの生き物や、演習林の渓流で水に触れてもらったり、山の神の前で谷を渡る心地よい風を感じてもらったり、本当に楽しい時間を過ごせたのです。
最後に今後、可能な限り「すべての人に」を合言葉に、morinosの有効な利用に向けて勉強をさせて頂きますので、よろしくお願いします。
以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。
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