「まわり道」な「森のだんごむし」の1年間の活動をふりかえって

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 アカデミーを主な活動拠点に、森や川や田んぼなど自然環境を主な舞台に、お母さんたちが交代で子どもたちの成長を見守る「野外自主保育 森のだんごむし」。いわゆる代表もリーダーも組織図も全くない、まるで「小さな大家族」のような森のようちえんの1年を振り返ってみたいと思います。

 この「森のだんごむし」は、アカデミーの「生涯学習部門」に位置付けられています。最短でも3年間365日続く、おそらく日本最長の生涯学習講座なんです。学び手は毎日森のようちえんに通う子どもだけではありません。実はお母さんたちにとっての学びと成長の場でもあるのです。

 

 

 今の世の中では本当に珍しいとも言える、「まわり道」ばかりをしながら、子どもたちの成長の空間を借りて、あるいはそれをきっかけに、知らず知らずのうちにお母さんたちが成長する場所というのが分かり易いのかもしれません。

そもそも野外自主保育という言葉に惹かれて集まったお母さんたちにとって、価値観もバックグランドも異なるお母さん同士がコミュニケーションとりながら一つの活動を維持運営していく、しかも子育てや家事をしながら、となるとそれはそれは物理的にも精神的にもかなりディープでハードな経験です。つまり「超面倒くさい」という関係性。

 

 

 すでにある「森のようちえん」というサービスをお金で利用するのではなく、「自分たちの手で」森のようちえんを「毎日」創って維持運営していかないといけないのです。

こんなに面倒なことやっている大人たちは、今時少ないんでしょうね。誰かに預けて気の合う友達とお茶したり、趣味や好きな仕事をバリバリしたりすることを選ぶ人の方が圧倒的に多いはずです。

 

 

 もちろん楽しいことばかりではありません。時には(いや、しょっちゅう)意見がぶつかり合い、遠慮しているとストレスが溜まったり、保護者同士のコミュニケーションがうまくいかないと子どもたちにも影響が出たり。。運命共同体の中でのベタで大変な活動です。

去年も書きましたが実はナバも、「本当にこの自主保育スタイル、やめた方がよいのではないだろうか」と何度も自問自答してきました。でもこう思ったんです。

 

 

 気の合う仲間だけで、あるいは1人で、我慢もせずに、モノと情報が簡単に手に入り、自分の思うままのペースで、他人と関わることもせずに、たいていの欲求は気軽に解消できてしまう現代。

 

 

 でもそんな時代の中で、一つの目的のために異なる価値観の人と過ごし、しっかりと耳を傾け、意見を言い、ぶつかり合い、多様性を認め、譲歩しあい、受け入れ、今までにない世界に飛び込み、行動し、失敗し、うまくいかずに悩み、でも助け合い、笑い合えるそんな、人間という動物が群れで暮らしていく上で太古からつい最近までず〜っと続けてきたことを、今はほとんどの人がやめてしまったのかもしれません。

 

 

 そうした中、お世辞にもコミュニケーション上手とは言えないお母さんたちが、あえてこの森のだんごむしを選び、不器用ながらも(ごめんなさいね)なんとか勇気を振り絞って、それでもなんとか直球で、そして互いにボコボコに傷つきながらも、コミュニケーションを取り合いながら活動してきました。

答えも何もない世界で、いま目の前で起きていることを自分の感覚でとらえ、自分で考え、自分で行動する毎日。。。うまくいったかいかないかではなく、向き合っていたか、自分に正直でいられたか、今ここにいたか、心と言葉や行動がつながっているか、というゴールに向けて、そして物事の「芯」を常に見出そうと、ひたすら考え悩み続け行動し続けてきたのではないでしょうか。

 

 

 だから今回の「コロナ」の感染症なんていうのは、だんごむしのお母さんにとってはそれほど大きな課題ではなかったのかもしれません。事実、「今回のコロナのおかげで、本来大切にすべきもの、本来のだんごむしの姿が分かったような気がします」と一人のお母さんが教えてくれました。

 

 

 これほど真剣に子育てや人間関係にしっかりと向き合ってきた母親たちに見守られてきた子どもたちは幸せだなぁとつくづく思います。決してスマートでなくとも、お母さんたちの思いはしっかりと子どもたちに伝わっているはずです。上手にやることが重要ではなく、真剣に向き合うことの暖かさや気持ちよさを実感しているはずです。そして決して無理をしない。

 

 

森はそんなお母さんたちを包み込むように、今年も見守ってくれました。ありがとう森。

そしてお母さんたち、がんばったね。おつかれさまでした&本当にありがとう。

 

なんちゃって先生 萩原ナバ裕作

 

 

 

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